更新日:2025年11月10日

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【インタビュー記事】安心できる居場所を目指して―認定 NPO 法人 happiness の歩み 第3回

※このページでは、認定特定非営利活動法人として認定された団体については「認定NPO法人」と記載しています。

認定NPO法人happiness(以下「ハピネス」)は、「子どもや若者が孤立しない地域社会」をつくることを目的に、京都市南区を拠点に活動する団体です。 本稿では第2回に引き続き、ハピネスが実施している居住型支援の詳細や受益者の声をお届けします。 

happinessの活動の様子

「次の居場所」がない

「家に帰るのがつらい」「行くあてがない」。そんな状況に追い込まれた子どもたちが京都府内にも少なくありません。一時的に保護を行う場所としては児童相談所がありますが、その後に安心して暮らせる、そして自立を目指す「次の居場所」が足りないのです。 

DV被害を受けた母子を対象とするシェルターは全国各地にありますが、子ども本人のための居場所は限られています。こうした現実に向き合い、ハピネスは「子どもたち自身のための施設」を運営してきました。代表の宇野明香さんは言います。 

「私たちが運営する施設は一時的な避難所ではなく、子どもたちが安心して生活を整え、やがて自立していくための出発点なんです」 

子どもたちに「安心できる居場所」を 

現在、ハピネスでは次の3つの施設を運営しています。 

  • ハピネスハウス 
    自立援助ホームとして位置づけられる施設で、現在3名の子どもが暮らしています。自立援助ホームは、耐震や防火などの基準を満たし、最低5人以上が共同生活を営める体制を整えることが必要です。他にもスタッフの人員配置要件をクリアすることを条件として運営が行われています。 
  • ハピネスリボン
    「リボン=結びつき」を意味しています。自立援助ホームの制度から漏れてしまう子どもたちのために始まった自立支援を目的としたシェアハウスです。現在は3名が居住しています。 
  • ハピネスルミネ
    「ルミネ=光・灯火」を意味しています。光を失いかけた若者に寄り添う施設です。京都市若年被害女性等支援事業の枠組みの中で運営が開始され、現在も入居に向けた相談が複数件、同時進行しています。 

入居している若者の声 ― ハピネスで感じた「つながりと安心」 

ハピネスの施設で暮らす若者の言葉からは、そこにある、支援の温かさが伝わってきます。

「ここは第二の家」Yさん

実家での生活に息苦しさを感じ、知人の紹介で入居したYさん。半年は馴染めずにいましたが、今では「第二の家」として安心できる場所になりました。 

「ここには家族以外に頼れる大人がいます。多様な考え方に触れられるし、失敗しても受け止めてもらえる。そんな環境で、自分を追い詰める癖が和らぎ、生きやすさを感じられるようになりました」 

現在は仕事にも取り組み始め、経済的な自立に向けた一歩を踏み出しています。 

「ハピネスの一員という言葉が支えに」Hさん

ハピネスハウスに入居して8か月のHさんは、当初は公園や知人宅を転々としていました。自ら「少女 居場所」と検索してハピネスを見つけ、LINEで連絡した翌日に入居しました。 

「スタッフや他の入居者が優しくて、何でも相談できます。特に宇野さんを信頼していて、LINEでも頻繁にやりとりしています。良くない友人関係を断ち切れたのもここに来られたから。リストカットもやめることができました。『ハピネスの一員』という言葉が、今の私の心の支えなんです」 

現在は病気療養中ですが、退院後は高卒認定の勉強を始め、保育士になる夢に向けて進む予定です。 

「気持ちが晴れて前向きになれた」Sさん

高校の寮を退寮し、通信制高校に転校後、ハピネスハウスに入居したSさん。学業とアルバイトを両立しながら、新しい生活を始めています。 

「ここでは職員さんがいつでも話を聞いてくれるから安心です。食事も朝晩きちんと出してもらえるので、乱れがちだった生活が整いました。心配事が減って、勉強やアルバイトにも前向きに取り組めるようになったんです」 

将来はネイリストになり、自分のお店を持つことを夢見ています。 

子どもたちの現実と支援する側の課題 

ハピネスの施設には、さまざまな背景を抱える子どもたちがやってきます。 

中には、家庭から24時間GPSで監視されていた子、虐待や経済的困難から逃れてきた子もいます。彼女らは入居当初、大人に対して強い不信感を抱いており、恐怖や敵意を示すことも少なくありません。 

その心を少しずつ解きほぐすのは、毎日の食事や会話、安心できる生活リズムといった、ごく当たり前の日常です。ハピネスの自立支援に関わるスタッフは現在6名。代表の宇野さん自身も夜間の見守りに入りながら、子どもたちと一緒に過ごす時間を大切にしています。 

子どもと一緒に過ごす様子

支援の現場では、価値観の違いによる運営の難しさもあります。
子どもたちは敏感で、大人の言動に矛盾があるとすぐに混乱してしまいます。そのため、職員同士でのミーティングを重ね、支援方針の統一に努めています。これまでには理念の違いから離れていった職員もいましたが、「ともに歩んできていただいた皆さんには本当に感謝しかない」と宇野さんは語ります。 

居住支援法人としての新しい役割

令和6(2024)年、ハピネスは京都府から「居住支援法人」に指定されました。 
これは、低所得者、高齢者、障害者、子育て世帯など、住宅の確保に特に配慮が必要な人に対して、家賃保証や入居相談、生活支援を行う仕組みです。京都府内では40以上の法人が活動しています。 

もともとは住宅の紹介や保証人など契約のサポートが中心でしたが、宇野さんは「居住支援法人には、入居後のアフターケアも含めた福祉的な役割も求められている」と言います。 

地域で子どもを育てるために 

happinessの活動の様子子どもが孤立し、非行や危険な環境に巻き込まれる背景には、様々な要因がありますが、最近、特に問題となっているのはスマホを通じた不必要な情報へのアクセスです。こうした情報に触れやすい時代だからこそ、地域での見守りや居場所が不可欠です。 

ハピネスは子ども食堂や地域のコミュニティカフェ、公式LINEでの相談を通じて、日常的に子どもとつながる仕組みを整えています。こうした活動が点から線に、そして面へと広がり、地域全体で子どもや家庭を支えるネットワークとなっているのです。 

今後は、複数の子育て世帯が共に暮らし合う「コレクティブハウス」の実現も視野に入れています。核家族化が進む現代において、「みんなで子どもを育てる社会」を再構築する試みです。 

財源と人材の確保へ

こうした活動の多くは、公的な補助金や委託事業に支えられています。しかし、それだけでは運営が追いつかないのが現実です。施設で暮らす子どもたちが安心して未来を描くためには、安定した財源と人材の確保が欠かせません。 

宇野さんは「施設は一時的な避難場所ではなく、子どもたちがやがて自立して、自分らしい人生を歩んでいくための出発点。ここから社会へと羽ばたいていく姿を支えたい。」と語ります。 

結びに 

施設に入居している若者の声からも分かるように、ハピネスの施設は単に「生き延びる場所」ではなく、「自分を取り戻す場所」であり、「未来へと踏み出す場所」です。 

認定NPO法人happinessは、その小さな一歩を子どもたちと共に歩んでいます。地域と社会全体でこの歩みを支えることこそ、私たち大人に求められている役割ではないでしょうか。 

ご寄附のお願い 

happinessのロゴ画像

認定NPO法人happinessでは、ふるさと納税を通じて子どもや若者を孤立から守る活動を支えてくださる寄附を募集しています。皆さまからのご支援は、ハピネスハウスの子どもたちのために活用されます。 

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お問い合わせ

文化生活部文化生活総務課 府民協働係

京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町

ファックス:075-414-4230

bunkaseikatsu@pref.kyoto.lg.jp