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更新日:2021年9月1日

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水源の里・古屋の取組などについて

綾部市には18の「水源の里」があります。水源の里とは、「上流は下流を思い、下流は上流に感謝する」という理念を持つ「水源の里条例」で指定された集落のことです。過疎・高齢化が進む山間地の、いわゆる限界集落と呼ばれる集落に対して都市住民との交流や特産品の開発に市が経費を補助し、活性化につなげようという取り組みです。

2006年、綾部市が全国に先駆け初めて制定し、市内5つの集落から始まりました。今では全国157の市町村に水源の里があります。
 

水源の里 古屋

最初に水源の里となった5集落のひとつ、綾部市東部・奥上林地区にある古屋(こや)という集落の取り組みを紹介します。

古屋は京都府で最も小さな集落。現在、2世帯3人が暮らしています。そのうち2人は90歳を超えるおばあちゃん。細見恵美子さん(90)と渡邉ふじ子さん(94)です。もう1人はふじ子さんの次男の和重さん(69)で、この方も高齢者と呼ばれる年齢です。住人は少なく高齢化率100%の古屋ですが、年間のべ2000人もの人たちが訪れる集落でもあります。


集落の入口付近。中央に見える建物は作業場でもある古屋公民館。


左から、渡邉 和重さん、ふじ子さん、細見 恵美子さん

綾部市街地から車で約50分の山間部に位置する古屋には、推定1,500本とも言われる栃の木の群生があります。中には樹齢1,000年の木もあると言い、毎年秋になると栗に似た実がたくさんできます。この地域では、それを利用して昔から冬の非常食であるとち餅を作ってきました。


栃の大木(渡邉さん提供)


栃の実(古屋でがんばろう会提供)

水源の里の話を持ちかけられた際、紆余曲折ありながらも古屋ではとち餅を特産品として売り出すことにしました。そして、栃の実を使ったおかきやあられ、クッキーといった商品を開発。2018年には発案から5年をかけた栃の実の焼酎「栃神」も発売にこぎつけました。


どの商品も、栃の実をしっかり味わえます。あられの香ばしさは栃の実と相性抜群!

アクの処理が難しく、完成までに3年かかったそう。まろやかな口当たりが特徴です。
水源の里の取り組みを支持する山田啓二京都府知事(当時)も、自ら酒造に掛け合いました。


とち餅作り。できたてを砂糖でいただくと栃の風味が広がってとても美味!


「つやが出るように丸めるんやで」とふじ子さん。教えてもらいながらやってみましたが、全然ダメでした。

しかし、原料となる栃の実は急な斜面を登りながら拾わなければならず、当時、すでに高齢だったおばあちゃん達にはなかなかの重労働です。そこで支えになったのがボランティア。当初、市や府を通して募り、約50人のボランティアが集まりました。それがきっかけとなり、数年後にはおばあちゃん達を放ってはおけないと有志が集まって「古屋でがんばろう会」という自主応援組織ができました。

現在、会のメンバーは300人を超え、栃の実拾いや実を獣害から守る鹿よけネット整備、薪作り(実のアク抜きに必要な大量の灰を作るため)、雪かき、実を拾うための登山道整備などのボランティアで住民を支えています。中でも栃の実拾いは京阪神の都市部からも参加するほどの人気ぶり。海外の旅行客も会のメンバーが運営する宿主催のツアーで体験したり、地元の小中学校の児童生徒も校外学習として参加したりしています。ちなみに、おばあちゃん達はボランティアに訪れる人々に必ずとち餅ぜんざいを振る舞います。それを楽しみにして参加している人もいるとかいないとか…。

こうした取り組みがテレビ番組や雑誌で紹介され、口コミなどで知られるようになり、古屋は全国から多くの人が集まる集落になったのです。
 

栃の実拾い~アク抜き

毎年9月頃に8、9回開催する栃の実拾いボランティアには、1回で30~40人が参加し、だいたい50~60kgの実を収穫できるそうです。実がよく成って豊作の成り年と、たくさんの収穫は期待できない裏年があり、成り年だった2020年は全回を通して合計1,400kgの実が収穫できたそう。裏年でも700~800kgの実が採れるといいます。


栃の実拾いボランティアの様子(古屋でがんばろう会提供)


採れた栃の実(古屋でがんばろう会提供)

収穫した実はアク抜きをしないと食べられません。栃の実はアクが非常に強く、そのままではとても苦いのです。このアク抜きもまた、大変な時間と手間を要します。まず、実を拾ったら2日間流水にさらし、1ヶ月間天日干しします。その後お湯で温めて柔らかくし、“栃へし”という道具を使って一つひとつ皮をむき、実を水から茹でます。そこに灰を入れ2~3日間保温しながらアク抜きをして、やっと食べられるようになるのです。灰の種類の選定や、灰と水の調合、水に漬ける時間、温度管理など、実の様子を見極めながらの作業です。


栃へしを使って皮をむく様子(渡邉さん提供)※右から2番目の岩崎キクノさんは2020年お亡くなりになりました

この、灰で煮る作業こそがおばあちゃん達の長年培ってきた経験がものをいう作業で、特産品を作る際の味の決め手になります。実を拾ったり、お餅を作ったりすることは他の人でもできますが、アク抜きの作業は一朝一夕ではできない難しい部分です。
 

渡邉さん

集落唯一の男性で、特産品の運搬や販売、ボランティアの受け入れなどすべてを取り仕切ってきた渡邉さん。しかし、2019年5月、脳梗塞で倒れ、体が不自由に。現在も杖をつきながらリハビリに励んでいます。

渡邉さんが入院した当時、古屋の取り組みを知る誰もが「古屋は終わった」と思ったと言います。しかし、渡邉さんの「古屋をなんとか維持したい」という強い思いを受け、今ではがんばろう会のメンバーや市職員が中心となって取り組みを支えています。渡辺さんは、約10年続いてきたがんばろう会に思いがしっかり受け継がれていると感じたそう。水源の里条例が施行された頃は7人だった人口は今では3人。ボランティアのおかげで古屋は維持できていると渡邉さんは言います。

ただ、一方で深刻な問題も抱えています。技術の継承です。栃のアク抜きは前述のように経験による部分が大きいため、それを伝えていくことが大きな課題です。受け継ぎたいと申し出てくれる若い人はいますが、教えたからといってすぐにできることではありません。おばあちゃん達も90歳を超え、「自分たちには時間がない」と語気を強める渡邉さん。「5年10年先の話ではない。来年、再来年の話なんです。急がないといけない」
 

上流は下流を思い、下流は上流に感謝する

自分たちでやれることはやる。できない部分は人を頼る。古屋のことを知るにつれ、持ちつ持たれつで成り立っていると強く感じました。遠慮しながら申し訳なさそうにではなく、かと言って「できないもんはできないんだから」と開き直るわけでもなく、「お互い様」。『上流は下流を思い、下流は上流に感謝する』という理念がここでも息づいています。だからこそ、古屋には人が集まってくるのだと思います。

(2021年3月取材)

 

■問い合わせ先
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綾部市八津合町上荒木5
TEL 0773-54-0095
E-mail teijyutiiki@city.ayabe.lg.jp

 

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