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京丹後市立弥栄病院 副院長 高原 誠治先生
眼科医 高原 誠治の一日
弥栄病院のある京丹後市は、京都市に比べ人口はワンオーダー以上違い、超高齢化社会に向かっている地域ですが、人は優しく昭和の良いところが残った風情溢れる地域です。
僕の専門は眼科です。今も眼科医として普通に眼科を担当していますが、専門科にこだわっていては地域の医療は成り立ちません。
本日は、実際の地域救急医療の日常を「僕の一日」と題し、平成23年11月のある土曜日の当直の話をします。
朝一9時に、咽頭痛・風邪の症状の患者さんを診察し、
続いて9時48分、車のドアで指を挟んで、指先がぶらんぶらんした患者さんが来院。指が粉砕骨折していました。知覚は残っているので、爪に穴を開けて縫合し、シーネをあてて固定し何とか指の形状に・・・。
午後12時からは一度に4人の来院がありました。このうちの2人は救急搬送で受け入れています。
僕一人で全て迅速に処置していきます。
しかしこの迅速な対応には、病院スタッフ全員の協力が不可欠です。当院スタッフは非常によく対応してくれます。当直の看護師2名は緊急でピンチになると、看護師増員をしてくれます。病棟からや管理当直の師長まで対応してくれます。また、レントゲンは24時間体制・オンコールで、CT、MRI対応可能です。検査部も多忙時には、心電図対応にあたってくれます。
迅速に対応していけるのは、この全員力のおかげです。
この4件のうち一番重症だったのは、パンペリ(※1)を起こした男性のご老人でした。CT画像で虫垂炎と判明し、患部がまたえらく深いところにあり、オぺが必要でした。
しかし今日は外科の先生が1人しかいないのです。
当院は産婦人科があり、オペ室はいつでも30分以内に対応可能です。オペは僕が「前立ち」で、外科の先生が執刀医で開始しました。ひょっとして全身麻酔になる可能性もあり、産科の先生に呼吸管理チェックだけしてもらい、オペは無事終了しました。患者さんは次の日からもう普通に話せて、「本当にありがとうございました。」って・・・。「僕は全然、手術してないんですよ~」なんて会話をしました。
患者家族の方も最敬礼してくれて、なんか医者やっててよかったな~って思いました。
以降も午後の外来患者さんの対応をしていきます。
夜中には、妊娠15週目の若い夫婦が来院。
夫婦で丹後の蟹を食べに来て、奥様が腹痛を起こしていました。ご主人は大変心配し慌てふためいていたので、「お腹の赤ちゃんのこと心配やろうから、それも診てもらうし心配せんでいいで・・・」となだめ、産科の先生に診察してもらいました。母体は何のことはない胃腸炎でした。点滴で処置し、赤ちゃんも大丈夫でした。「赤ちゃん大丈夫やしね・・・」と伝えたら、ご主人も安心され、えらく感謝されました。
夜中から明け方にかけて眩暈での来院、結石での来院がありました。夜中でもCT、採血等全て対応可能です。
当直が明けようとする時間、最後の最後にやっと僕の専門の患者さんが!
目に何か刺さったみたいで結膜切れてたのでは?と訴える患者さんでした。診察してみると目にゴミが入っていたので鑷子で摘みながら、「あ~やっと俺は眼科医なんや~」ということを思いながらの当直明けでした。
この日は救急車4台がずっと来ていたのですが、救急搬送の方は生死を分けるような感じのものではありませんでした。外来診察が一番重症度の高い患者さんでした。
当院は田舎の病院で医師不足ではありますが、優秀なコ・メディカルに支えられています。看護師の仕事に対する熱意とホスピタル精神、検査部スタッフは血ガスのデータ結果を処置室へ走って持って来てくれます。看護部やコ・メディカルの方々には、日々本当に感謝しています。
医師を含めた病院スタッフの全員の力を合わせ、日々地域の医療を支えています。
(※1)パンペリ・・・汎発性腹膜炎(panperitonitisの略称)いわゆる腹膜炎。文章に戻る