[Q&A]
第2章 精神科医療
Q1 精神科の治療とはどのようなものなのですか?
精神的に不調で、専門的な治療を受けてみたいとは思うのですが、精神科の治療は他の科とどう違うのですか。
A1 心の病気ではないかと心配し、医療機関に訪れる人は年々増加しています。しかし、何のためらいもなく、精神科医のもとへ相談される方は、まだまだ少ないのではないかと思います。精神科での診察・治療とはどんなものかという不安と抵抗感が大きいかもしれません。そんなときにはまず、身近な保健所や市町村、あるいは京都府精神保健福祉総合センターや京都市こころの健康増進センターなどに精神科医療機関の利用の仕方などについて相談されるのが良いでしょう。こころの相談電話での匿名相談も可能ですので、利用しやすいと思います。
精神科の診察では、まず、ほとんどの場合、皆さんのお話をゆっくり聞くことから始まります。どのようなことでお困りなのか、それまでの経過や思いなどを詳しく聞きながら精神医学的診断をします。場合によっては血液検査やレントゲン検査が必要なこともあるかもしれません。
治療はまず、本人や家族のかかえている問題を、精神科医などの専門的な目を通しながら時間をかけて整理します。そして、精神的安定をはかる精神療法と、苦痛や問題行動をいち早くやわらげるために薬を服用する薬物療法が基本になります。薬に関しては、比較的安全な薬がほとんどですが、時に不快な副作用が出ることもありますので、主治医に遠慮なく相談し、自分にあった薬を見つけることが大切です。
多くの方は、こういった外来での治療で十分であり、症状が比較的安定すれば、2週間から1ヶ月に1回の通院で済みます。しかし、病状の経過などによっては、入院治療が必要な場合もあります。主治医とよく相談しましょう。
Q2 身近にある精神科の医療機関を知りたいのですが?また、どのように受診したらいいのですか?
通院しやすい身近な医療機関で、精神科の診療を受けたいと思っています。どういうところがありますか。また、何か必要なものはありますか。
A2 精神科の診療は、最近では、多くの場合が外来治療で済むようになってきています。身近な病院や診療所で、日常性や社会性を保ちながら治療を受けられるということは良いことだと思います。さらに、医療機関によっては、児童・思春期やアルコール依存症などの特定の領域を中心に診療しているところもありますので、まず、電話で問い合わせて確認してください。
初めての受診であれば不安も大きいと思います。お住まいの地域の保健所や、京都府精神保健福祉総合センターや京都市こころの健康増進センターの「相談電話」では、あなたのお話を伺いながら、身近にある精神科の医療機関やその利用の仕方、場合によってはより専門的な医療機関についての情報もお伝えできると思います。
初めて精神科の医療機関に行かれるときは、保険証を持っていきましょう。初診は予約制になっている診療所などもありますので、まず電話で確認しましょう。その時に大体の費用も確認していただけたらと思います。
Q3 精神科の入院手続きはどのようにしたらいいのですか?
精神科での入院治療は手続きが複雑なようですが、教えてください。
A3 心の病いでは、入院治療が必要な状態でも、それを理解することが困難になる場合があります。そこで、必要な入院治療を受ける機会をのがさず、このような患者さんの人権を損なわないように、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)」ではいくつかの入院の手続きを取り決めています。
1.任意入院
患者さん自身が入院治療の必要性を、主治医の説明のもとで納得し、その病院の管理者との間で入院治療契約をするという方法です。これは、身体の病気での入院と同じ手続きです。入院したあとで、いろいろな事情で退院したいときには、原則的に自分の意思で退院できます。
2.医療保護入院
患者さんが入院治療の必要性を理解できない場合などに、保護者の同意を得て、入院治療をする方法です。この入院については、精神保健指定医という特別の資格をもった医師が適否を判断します。(保護者についてはQ4を参照してください。)
3.措置入院
精神症状が深刻化し、そのために自らを傷つけたり、あるいは他人に危害を与えたりする恐れのあるときがあります。その場合は、通報、申請等により保健所等の職員が状況を確認の上、二人以上の精神保健指定医が診察し、なおかつ入院治療が妥当と判断された場合、保護者の同意がなくとも知事(あるいは京都市長)の権限で入院治療を指定された病院ではじめることになります。これを措置入院といいます。患者さんの人権を守る立場から、手続きには行政職員が必ず立ち会うことになっています。他にも応急入院、緊急措置入院などの制度があります。
Q4 「保護者の選任」には、どのような手続きが必要ですか?
子どもが入院したところ、「保護者の選任が必要」といわれました。「保護者」とはどういう制度なのですか? どういう手続きが必要ですか?
A4
1. 保護者の義務について
「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)」第22条に、保護者の義務として以下のものを挙げています。
- 精神障害者に治療を受けさせること及び精神障害者の財産上の利益を保護すること
- 精神障害者の診断が正しく行われるよう医師に協力すること
- 精神障害者に医療を受けさせるにあたっては、医師の指示に従わなければならない
(上記の(1)及び(3)については、任意入院、通院中の者は除きます)などがあります。
2. 医療保護入院と保護者
精神科の入院形態のひとつに医療保護入院があります。
医療保護入院とは、「精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院の必要がある者であって当該精神障害のために入院の必要性について本人が適切な判断ができない状態であると精神保健指定医が判定した場合、保護者の同意があるときは、本人の同意がなくてもその者を入院させることができる」入院制度です。
通常の場合、配偶者や親権者が保護者となりますが、離婚等により定められた親権者と実際の扶養義務者が異なる場合などは、保護者の選任が必要となります。この場合、保護者の選任を受けようとする方は、入院後早期に家庭裁判所に申立をして選任を受ける必要があります。
3. 誰が保護者となるか
保護者の義務を行う順位は次のとおりになります。
- 後見人または保佐人
- 配偶者
- 親権を行う者
しかし、上記の該当者がいない場合、「扶養義務者(親や祖父母、兄弟姉妹、三親等内の親族等)」の中から家庭裁判所の選任を受ける必要があります。
選任の申立は、精神障害者本人の住所地の家庭裁判所に申立を行います。必要書類は、保護者候補者の戸籍謄本など数種類ありますので、詳しくは家庭裁判所に直接お問い合わせください。
Q5 薬とその副作用について教えてください。
精神科の薬物療法で使われる薬には、どのような作用と副作用があるのですか。また、副作用が出たときには、どうすればいいのですか。
A5 病気の種類にもよりますが、薬物療法は基本的に、長期間の服薬を必要とすることが多いようです。たとえば統合失調症では、幻覚や妄想などの症状を薬で抑えているので、症状がある程度治まっても、服薬を中断すると数日から数ヶ月後に再発する危険性があります。また、再発を繰り返すと、元の健康な状態に戻りにくくなってしまいますので、服薬を継続することが必要なのです。
副作用には、口渇、便秘、眠気、ろれつが回らない、イライラする、などがあります。これらの副作用については、主治医にはっきりと伝えておくことが大切です。副作用の出方は、薬の種類や服用の仕方によっても変わります。病気の状態や副作用の出方などをくわしく聞くことで、 主治医も薬を調整していきますので、「いつから、どのような状態なのか」「それにより、どのくらい生活に支障があるのか」について、遠慮なく伝えておくことが望ましいでしょう。
薬が癖になる、依存におちいるのでは、と心配される方もありますが、薬には依存を起こさない、あるいは起こしにくいものと、依存を起こしやすいものとがあります。ただ、たとえ依存を起こしやすい薬でも、医師の指導により安全に服薬することが可能です。また、体重が増加することを気にされる方もあるでしょう。体重増加は、薬によって食欲が増したり、生活リズムが乱れて寝ていることが増えたり、喉が渇いたときにジュースや缶コーヒーを飲んだりすることが原因と考えられます。食生活を正し、運動を心がけましょう。また、薬の調整によって、体重増加への影響を軽減できることもあります。
こういった薬に関する疑問や不安は、主治医とよく話し合いましょう。
Q6 デイ・ケア、ナイト・ケアについて教えてください。
精神料のデイケア、ナイトケアとはどのようなものなのですか。
A6 人とうまく付き合えない、働きたいけど自信がない、何をしたらいいのか分からない、生活が不規則になりがち、相談できる友人がいない、など、精神障害のために生活上の様々な困難を抱えた方に対し、デイ・ケアでは昼間の一定時間(6時間)様々な治療訓練を行っています。
通院治療のひとつで、医師の管理のもとに、作業療法士、看護師、精神保健福祉士、臨床心理技術者など様々な職種からなる医療チームによって行われます。
プログラムは手工芸やスポーツ、ミーティング、レクリエ−ション、料理など様々ですが、それらを通じて、規則的な生活を送ったり、日々を楽しく過ごせるようになったり、友人を作ったり、作業能力や生活能力を高めたりすることを目的としています。ナイト・ケアは、午後4時以降の4時間となっています。
また、デイ・ナイト・ケアといって、一日につき10時間程度の治療訓練を行っているところもあります。
通所にさいしては、ご本人の「通所したい」という気持ちが最も重要ですが、病状の重い時期には、通所が精神的な負担になることもありますので、まずは主治医に相談してみましょう。
Q7 「訪問看護」とは、どのようなサービスなのでしょうか?
通院している病院の待合室で知人と話していたら、看護師さんが家庭を訪問して、薬の飲み方などを指導してくれる「訪問看護」というサービスがあると聞きました。どんなサービスなのでしようか。
A7 「精神科訪問看護」は、精神科の病院、診療所、訪問看護ステーションから看護師、保健師などの職員が家庭を訪問して、健康管理、療養のアドバイスなどを行うものです。
具体的には、
- 病気の再発防止に関する援助:不安や苦痛を和らげる、健康管理、薬の飲み方などの療養生活上の援助
- 生活の支援:生活のなかでの健康管理上の援助
- 家族への支援:病気の理解、接し方などの支援
などです。あくまで訪問看護は、精神疾患などの病気の治療などを中心に支援する医療的サービスですので、ホ−ムヘルプサービスとは性格の異なるものです。
利用できる人は、精神科の外来に通院中の方で、訪問看護を希望し、主治医がその必要性を認めた場合です。利用料は医療費になりますので健康保険が使えますし、精神障害者自立支援医療費制度も利用できます。詳しくは主治医や医療機関に相談してください。
Q8 医療に疑問や不満を感じているのですが?
現在受けている精神科の医療行為に疑問や不満を感じているのですが、どこに相談したらよいでしょうか。
A8 外来通院での疑問や不満であれば、遠慮せずに主治医に言ってみてはどうでしょうか。言いにくいときは、精神保健福祉士や看護師などに相談してみてください。「言っていいのだろうか」と思われるかもしれませんが、患者さん自身が十分な説明を受け、納得した上で治療が行われていることが大切ですので、疑問があれば主治医に質問すればよいでしょう。また、良好な治療関係がどうしても築けない場合は、医療機関をかえたり、他の医師や専門家に助言を求めたりすることも必要かもしれません。
入院治療を受けていて、特に退院などについて、医師の判断に納得がいかなかったり、病院職員などから不当な扱いを受けていて不服を覚えた場合などは、主治医や病院職員にそれを伝えることの他に、都道府県知事へ請求することができます。どの病院でも必ず病棟内の電話の近くに、退院請求や処遇改善請求のための相談電話、法務局人権擁護課の電話番号を書くことになってます。