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地域おこし協力隊として、観光振興に取り組む小橋さん(南山城村)
移住したきっかけを教えてください。
「奈良の実家に近い場所で暮らしたい」——その思いと、小学生の頃に林間学校で訪れた記憶がどこかに残っていたこと。この二つが重なり、京都府の南山城村への移住を決めました。
私は大阪で生まれ、5歳から17歳までを木津川市で過ごし、高校と大学は京都市内に通いました。大学時代には1年間休学してニュージーランドへワーキングホリデーに行きましたが、これが人生の大きな転機となります。その後再びニュージーランドへ渡り、飲食店の経営者として奮闘し、気がつけば25年という年月を現地で過ごしていました。
2019年末に日本へ一時帰国していた際、新型コロナウイルスの影響でニュージーランドへ戻れなくなりました。日本に残って最初に始めたのが、長崎県波佐見町での地域おこし協力隊です。任期満了後、今後の暮らしを考える中で、高齢の両親が暮らす奈良へのUターンを決意。そのタイミングで奈良からほど近い南山城村の地域おこし協力隊募集を知り、現在の移住に至りました。
現在の仕事・生活について教えてください。

現在、地域おこし協力隊として観光振興に携わっています。海外で培ってきた経営の経験を、今度は地域に生かしていきたいと考えています。
地域おこし協力隊のミッションとして目指しているのは、観光協会の立ち上げです。ただ観光客を呼び込むだけでなく、地域の一次産業としっかり結びつけることを大切にしています。しかし、地元の農家では後継者不足が進み、使われなくなった田畑も増えたことで、出荷量の減少にもつながっているのが現状です。
そこで提案しているのが、まずは自分たちが食べる分を作り、余ったら出荷するという無理のない農業への関わり方です。耕作放棄地を少しずつ活用しながら、手植えや無農薬、はさ掛けといった昔ながらの手法による小規模な田んぼ作業にも関わっています。
こうした一次産業の取り組みと観光を結び、訪れた人が村で食べ、泊まり、買い物をする流れを生み出すことができれば、地域経済の循環が生まれ、やがては「ここで暮らしてみたい」という移住にもつながっていく——そんな形を目指しています。
さらに、地域の魅力づくりの一つとして取り組んでいるのが、日本ミツバチの養蜂です。勉強会や巣箱づくり体験を通じて仲間を増やし、すでに蜂蜜の採取も終えました。現在は瓶詰めやラベル制作を進めている段階です。今後は、南山城村ならではのハチミツとして商品化を目指しています。
地域おこし協力隊は3年間の任期付きですが、その期間は地域課題に専念できる立場が与えられます。生活の基盤を確保しながら活動に集中できることは、大きな支えになっています。
役場が発信する広報誌や新聞は大切な情報源で、地域の動きや課題を知ることで、自分の取り組みとの接点が見えてきます。

地域の魅力について教えてください。
南山城村でまず心に残ったのは、人のあたたかさとエネルギーです。移住者はとても元気で活動的な印象があり、先輩移住者が自然に声をかけてくれる風土があります。地域の輪にもすっと入りやすく、地元の方に畑を貸していただいたり、大家さんと日常的に交流があったりと、暮らしの中で人とのつながりを実感しています。「まだ1年なの?」と言われるほど自然に受け入れてもらえているのも、この村らしいところだと感じています。
自然の豊かさは言うまでもありません。山と川に囲まれ、四季の移ろいがはっきりと感じられる環境があります。宇治茶の主産地の一つでもあり、日常の風景の中にお茶畑が広がっています。原木椎茸やブルーベリーなど、この地域ならではの産物が身近にあるのも魅力です。ただ自然が豊かなだけでなく、「何かを始めてみよう」と思える気持ちの余裕がある——そこに、この場所ならではの可能性を感じています。
南山城村は、JR関西本線の駅が二つあり、国道163号も通っているので、山あいの村というイメージほど不便さを感じません。村営のデマンド交通(村タク)も整備されています。村内にスーパーやコンビニはないものの、近隣にはそろっており、日常生活で大きな不便は感じません。村内には診療所や小中学校もあるため、暮らしの基盤はしっかり整っています。

移住前後で感じたギャップはありますか。

思っていた以上に冬が寒いことには驚きました。山あいの地域とは理解していたものの、実際に暮らしてみると体感する寒さは想像以上でした。
一方で、良い意味でのギャップは、移住者の皆さんが予想以上に積極的で、自分のやりたいことに挑戦して楽しみながら暮らしていることでした。その姿に刺激を受けることも少なくありません。
自称「移住のプロ」の私は、どこに住んでも、その土地の良いところを見つけることはできます。環境が変わることを特別なことと構えすぎないで、新しい土地の中で楽しみを探しています。その姿勢のおかげで、移住は不安よりも可能性のほうが大きいものになっていると感じています。
これから移住を考えている方へアドバイスをお願いします。
どんなきっかけで移住を考えるのも、十分「あり」だと思います。いちばん大切なのは、「どこに住んでみたいか」という自分の気持ちです。まったく知らない場所に、いきなり移住する人は多くありません。まずは観光で実際に足を運び、その土地の空気を感じてみる。
何度か訪れるうちに、自分との相性も少しずつ見えてくるはずです。完璧な条件を最初から求めすぎないほうが、結果的に移住はうまくいくように感じています。
地域の魅力は、外から来た人のほうが気づきやすいこともあります。地元では当たり前になっている風景や習慣の中に、新しい価値を見つけられるのは、移住者ならではの面白さかもしれません。地域との関わりが少しずつ増えていくにつれて、居場所も自然とできていくものだと感じています。
環境の変化に身構えすぎず、その土地での楽しみ方をゆっくり見つけていく——そんな向き合い方が、ちょうどいいのかもしれません。

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