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鴨川の源流域、雲ヶ畑の様子は鴨川真発見記第150号・151号でご紹介しました。今回は鴨川へ流れ込む支流“貴船川”の様子をご紹介したいと思います。
叡山電鉄に乗り、降り立ったのは貴船口駅です。貴船川は、この貴船口で東の鞍馬から流れる鞍馬川と合流して鞍馬川となり、途中静原川と合流して、柊野上流で鴨川の本川と合流して鴨川となります。
<鞍馬から流れ出る“鞍馬川”>
<“貴船川”と合流して>
<鞍馬川として鴨川との合流点へ向かいます>
貴船川と鞍馬川の合流点で、散り始めた紅葉を眺めながら昼食を摂りました。合流点の橋の上から川の中を見ると、透き通る流れの中を背中に黒い点のある魚が泳いでいました。“アマゴ”でしょうか。
<貴船川と鞍馬川の合流点の橋の上から>
<透き通った水の中に“サカナ”>
河原に降りて水の溜まりを覗くと、落ち葉の上を滑る様に小さな魚が泳いでいます。ここなら大きな魚に捕食される心配も無いようです。
<水の澱みにも小さな“サカナ”>
<貴船川の“流れる水”“澱む水”>
貴船川沿いに歩いていくと、川の中の岩に野鳥がたたずんでいます。ひとまず撮影して、日本野鳥の会京都支部の中村副支部長に確認すると、ゴイサギの幼鳥“ホシゴイ”でした。“貴船”出身のゴイサギは珍しいですねとコメントが返ってきました。
成鳥になると目が赤くなる“ゴイサギ”も幼鳥の間の目は赤くないようです。
<“ゴイサギ”の幼鳥=“ホシゴイ”>
貴船川は道路に沿って浅く流れていて、川の中を泳ぐ魚の姿がよく見えます。
ここでも先程、合流点で撮影したもの同じ模様の魚の姿を見る事が出来ました。
<清流に“サカナ”>
程なくして貴船神社の本宮へ到着しました。神社に参拝して宮司の高井和大さんのお話しを聞く機会を得ましたのでそのお話しを交えて、少し貴船についてご紹介したいと思います。
<貴船神社 本宮へ> <鳥居をくぐり>
<階段を登り> <本殿で正式参拝>
高井宮司さんにはとても丁寧に講話をお聞かせ頂きました。貴船神社は、主に“雨乞い”と“雨止み”を祈祷する神社です。由緒など詳しいお話は貴船神社のホームページをご覧頂くとして、少し興味を引かれたお話しを幾つかご紹介したいと思います。
最初に興味を引かれたのは、神社の御社号についてです。古くは“気生嶺(根)(きふね)”、木生嶺(根)、黄船、貴布禰、木船、貴船と“きふね”“きぶね”の文字が充てられていました。明治4年の太政官達により「貴船神社」と統一されました。
<御神木 桂>
このうちの“きふね”というのが、万物のエネルギー<気>が生じる根本「気生根」でその御神気に触れるだけで元気が甦るといわれており、元気回復すれば運も開かれるため、運気発祥の信仰が盛んで様々な願い事で参詣されているそうです。
貴船には、そのエネルギーを感じる御神木が堂々とそびえ立っていました。桂の木の根元から生えた“ひこばえ”が太い幹を守るかのように取り囲んでいる姿は、パワーを発していると感じるものでした。
<桂> <杉 大きな根>
高井宮司さんの口からは流れる水のように講話が続きます。中でもなるほどと頷いたのが、水のパワーのお話しのひとつです。水の音を聞くだけで人は元気が回復するという例示です。登山の途中疲労が体を重くしている時でも、目に見えない沢の水音を聞いただけで、「もう一踏ん張り!」と元気が沸いてくるというお話しです。
また境内には、賀茂七石の1つで貴船原産の“貴船石”の石庭が神聖な祭場をイメージして造られています。石は苔むしていて“貴船石”の特徴を見て取る事は出来ません。
<石庭の説明板>
せっかくの貴船石の特徴を見せるために、「コケを擦りとるべき」という人あれば、「コケが生えてこそ貴船石」という人ありと賛否両論だそうですが、一度擦り取ったコケが再生するのにどれだけ時間が必要か解らないので、現状を維持されているそうです。
<手前:船の先 真ん中・マストをイメージした“ツバキ”>
石庭の真ん中には、“ツバキ”が植えられていて、これが船の“マスト”をイメージしていて、神がここに降臨される場所とされています。中に敷かれた砂は、これまた“賀茂七石”の1つ山を隔てた鞍馬原産の“鞍馬石”を細かく砕いたものだそうです。
“賀茂七石”は鴨川水系の7つの場所から産出される特徴ある石の事です。
その全体像につきましては、少し詳しくご紹介する準備をしていますので、ご興味のある方は今後の“鴨川真発見記”にご期待ください。
本宮を後にして、結社(中宮)、奥宮へと参拝しました。結社では、船の形の大きな岩が設置されています。
<天乃岩舟> <船の様な自然石>
奥宮は玉依り姫が大阪から黄色い船に乗ってこの地に降り立ち、水が湧くこの地に社を定めたとされているそうです。
その時の船のまわりを石で囲ってある御舟形石が祀られています。石を崩して中を見た人はいないそうですが・・・。
<御舟形石> <石に囲まれた舟形>
奥宮の参拝を済ませて、鞍馬山を越えて鞍馬神社へと向かいました。少々急勾配の山道を“息を切らし”“汗を拭いながら”山頂まで辿り着くと、まだ見頃の紅葉が広がり、疲れを忘れさせてくれました。
<自然の庭園の様な貴船川に別れを告げて>
<根っこが飛び出す“山道”へ> <鞍馬山山門到着>
<山間に見える紅葉> <足元には落ち葉>
<見頃の紅葉がお出迎え>
<暮れゆく鞍馬を後にしました>
最後に、貴船神社で頂いた「貴船神社要誌」に掲載されていた“水五訓”に感じるものがありましたので、ご紹介させて頂きます。
<貴船神社 水五訓>
1、自ら活動して他を働かしむるは水なり
1、常に自ら進路を求めて止まざるは水なり
1、自ら清くして他の汚水を洗い清濁併せ容るるの量あるは水なり
1、障害に遭い激しくその勢力を百倍するは水なり
1、洋々として大洋を充たし発して蒸気となり雲となり雪と変し霰と化し凝っては玲ろうたる鏡となる 而もその性を失わざるは水なり
水に深い関わりのある河川関係の仕事に携わる者として、その大切さ、有り難さ、怖ろしさ、そして自然の営みを再認識させられる“水五訓”です。
鴨川真発見記をご覧頂いている皆様にも、“水五訓”から何か感じ取って頂けると幸いです。
<立派な天狗に見送られながら>
平成26年11月28日 (京都土木事務所Y)
鴨川は、皆さんに様々な形で利用頂いております。その様子は、これまでの「鴨川真発見記」でも数多くご紹介してきました。今回は、これまでにご紹介した事のないジャンルの利用をご紹介します。
目に見えず、耳に聞こえず、臭いもなく、味もなく、触感もなく、さて何でしょう。地下を利用しての大学生の実習です。
<大文字山も秋の装い>
とある交流会で、京都大学大学院工学研究科准教授の後藤忠徳先生と知り合いました。交流会での私のテーマは「鴨川」ということで、後藤先生と鴨川の話をしていると、「明日、京都土木事務所へ行って鴨川公園の使用申請をします。」とお話しになりました。
「何をされるのですか?」と興味津々に尋ねると、地下に電流を流してその通電状況で地下の様子を推測する実習(工学部3回生向け)を毎年同じ場所で3回実施されているとの事でした。
後藤先生は、自らの研究でも地下に大きな関心をお持ちで、琵琶湖と同じくらいの水量といわれる、京都盆地の地下水が今どうなっているのかについて多くの人が無関心なのはとても残念な事、もっと見えない所ににも関心を持って欲しいと熱く語られました。
その実習を是非見学させて頂きたいと申し出ると、事前に実習の概要を説明に来所され、プレゼン資料でその仕組みを教えて頂きました。難しい事はわかりませんが、電流の流れ具合で地下の様子がわかるという仕組みを少し理解しました。
電流は、粘土層など水分が多いと流れやすく、石ころの礫の層では抵抗が大きく流れにくいです。加えて、地下水の層では非常に流れやすくなります。
「鴨川真発見記」ご覧の皆様には、後藤先生にお持ち頂いた画像の一部をお見せいたしますので、その仕組みをビジュアルでご理解して頂きたいと思います。
実習当日、開始から少し時間をおいて実習現場に向かいました。途中“ユリカモメ”の小さな群れを横目に進んで行くと、沢山のユリカモメが鴨川で羽を休めていました。止まって写真を撮影しようとカメラを向けると、一斉に飛び立ちました。これぞ鴨川冬の風物詩「飛び交う“ユリカモメ”」です。
<一斉に飛び立つ“ユリカモメ”> <上流方向へと飛び去りました>
実習現場の荒神橋下流に到着すると、後藤先生の指導のもと学生さん達が実習をされていました。金属の電極の設置も完了し、いよいよデータ測定の時間がきました。
<電極スタンバイ完了> <マシンの操作説明>
アメリカ製の最新鋭のマシンが、約170通りの組み合わせの区間で電流を流し、その通電状況を5分足らずで自動測定します。
<マシン操作実習> <測定中のディスプレイ>
<計測の経過説明> <身振りを交えてわかりやすく>
ここで、後藤先生の受け売りの解説をさせて頂きたいと思います。地中に差した電極間に電流を流すと、その間隔の半分位の深さの場所の状況が測定されます。
この測定結果を抵抗が大きい部分と小さい部分に色分けして表示することで地下断面の様子が描き出されます。この作業をマシンが瞬時に計算して表示するのです。
パソコンの画面を見ながら後藤先生の説明が始まるのですが、その直前にマシンに大敵の雨がポツポツと落ちてきました。ブルーシートで覆いながらの説明になりそうです。
そんな状況の中、学生の一人が空の“虹”に気づきました。大きな虹が東の空に幅広く出現すると、しばらくして、比叡山を中心に空を飾る大きなアーチが完成しました。鴨川沿いにはサクラの葉が赤く飾り、東山にも紅葉が進み、空には七色の虹が橋を架けます。通りすがりの皆さんもしばし足を止めてスマホで撮影されています。
<でっかい虹が出現>
<やがて“アーチ”の完成です>
虹も太陽と空中の水分が奏でる科学の世界なのでしょう。絶景のロケーションに少々の雨もはねのけて実習続行です。
解説に戻ります。ここからは更に高度なお話しとなるのですが、パソコンの画面には三つの画像が縦に並んでいます。上中下の“上”の画像は、今実際に測定した生データの様子です。
<ブルーシートで覆いながら>
一番“下”の画像は、このマシンが推定した実際の地下構造、“中”の画像は推定された地下構造の上で得られる「はず」の仮想データの様子です。仮想データと実際に測定したデータが近いほど、推定された地下構造が正しいということになります。
こうして、実際の地下の様子を追求していく仕組みのようです。ハイテクノロジーの世界を覗かせて頂きました。この測定方法は、電極の設置と接続さえ正しければ、ボタンを押すだけで瞬時に結果が得られます。
それでは、3回にわたる実習の結果を見てみましょう。地中に含まれる水分は、雨の状況等により、毎日の様に刻々と変化している事がよく解ります。
人体の“サーモグラフィー”の様な図が表示されています。鴨川の体内のコンディションを見ているような気がします。
<鴨川実習2014>
<刻々と変化する鴨川の地底の様子>
後片付けをしながら、電極の仕組みの説明と、コードの巻き方のコツが説明されました。コード巻きのコツなら知っている学生が巻きはじめましたが、途中で苦戦です。見かねた後藤先生が助けに入られました。
<電極はこの部分に> <養生テープで巻き付けます>
<巻き役を買って出るも> <仕上げは先生>
後藤先生は、実際の業界ではこのやり方で測定するが、このマシンでの実習だけでは、学生の為にならないとお話しになりながら、次の実習に移られました。
年齢にすれば20歳となるという、旧世代マシンの登場です。大学生の皆さんとは同世代ですが・・・。4本の電極を使って数値を測定し、電極間の距離を広げていきながら「差しては抜き、抜いては差し」の繰り返しで、測定数値を記録し計算する作業実習です。
<電極設置役> <計測読み上げ 記録役>
<公式を計算機ではじいて> <場所を移動>
マシンが自動で計算する作業をアナログで計算することにより、その仕組みをより良く理解出来るという事です。
<空けた穴は埋めながら> <地道な作業>
後藤先生の地下調査の実習と並行して、助教の武川順一先生による地下振動の伝播状況を用いた地下探査実習も行われました。小型の地震計を直線上に等間隔に配置して振動の伝わる波形を時間軸と距離軸に表示します。
<振動を解析するマシンの説明>
振動を発生させる方法とは?測定器の端に置いた“円板”を思い切り“ハンマー”で叩きつけます。振り上げたハンマーには、トリガー(測定開始スイッチ)が取り付けられていて、衝撃でスイッチが入る仕掛けです。ストレス発散にもってこいの実習と感じました。
<芝生の上に置いた円板> <ハンマーを力いっぱい叩きつける>
この振動の伝わりを計測するのですが、計測中に起こる振動はこのハンマーからのものだけでなく、走る人の振動、近くの工事現場からの影響などなど様々な振動が存在します。それらの振動は調査対象振動に対するノイズと呼ばれます。
<取り付けられたトリガー> <波形が表示されます>
ハンマーからの振動が大きめの揺れとして記録されますが、ノイズはランダムに現れます。複数回計測する事により、計 測対象振動を特定し、ノイズをクリーニングして計測精度を高めるそうです。その回数は21回。理由ははっきりしませんが、先輩から代々引き継がれた奇数回数だそうです。
鴨川が育む未来の研究者達とでも題しましょうか。地下の地層や振動の伝達から連想するのは“地震”です。この調査技術は、何年か後には必ず起こると断言されている、南海・東南海地震に備える大きな手掛かりに繋がるものと思います。
鴨川は、調査の振動を肩叩き程度に楽しみながら、未来を支える若者を頼もしいと思っているかも知れません。鴨川から未来へ羽ばたく若者に期待しながら。
平成26年11月20日 (京都土木事務所Y)
後藤先生から、地底の事について皆様により深く御理解頂く一助として、先生が執筆された「参考文献」をご紹介頂きました。興味のある方はこちらをお読みになってはいかがでしょうか。
<参考文献>
後藤忠徳,地底の科学 地面の下はどうなっているのか,ペレ出版,199 pp.2013
現在、昨年9月の台風18号で被災した、鴨川の松原橋上流の護岸の災害復旧工事を実施しています。
崩れた護岸を修復する工事ですが、護岸に水があたっている状況での工事は出来ませんので、復旧箇所を盛り土で囲って護岸の傍の水を抜いてから護岸の工事を実施します。
<工事説明看板>
その間、鴨川の流れは左岸(東側)へ寄せます。護岸の傍には、魚などの水生生物が棲んでいますが、盛り土で締め切る前に護岸を離れる魚ばかりでなく、囲われた範囲に取り残されるものも少なくありません。
<11月8日 上流から> <11月8日 下流 松原橋から>
今回の工事範囲は106mの延長があります。3年前にも三条大橋下流右岸で護岸の修復工事を実施しました。
3年前の工事も同様に水を抜いて、大きなスッポンとウナギを救出する事が出来ました。今回は、出来るだけ多くの魚達を救出しようと、賀茂川漁協の方も手助けを頂けるということで、施工業者さんが本格的に救出作戦を展開されました。
大きく囲った盛り土を、水の中へ投入して水面の面積を狭めていきます。そして、魚を捕獲する事が出来るまで狭めたら、網ですくって鴨川の流れに返してやります。
救出作戦の数日前11月11日にも、鴨川漁業協同組合の澤組合長と京都府河川課の職員が現場の様子を見に行きました。
<11月11日 上流から> <11月11日 松原橋から>
澤組合長が、浅瀬となっている場所に降りて、網を差し入れると、ハエが沢山網に入りました。“鷺知らず”と呼ばれる佃煮が昔“京”の名物でした。それがこの小魚の佃煮です。
<網を片手に 澤組合長> <網の中に小魚>
“鷺知らず”の復活の試行が予定されているようです。まわりに集まったコザギ達も口にしないほど小さく、“サギ”も知らない小さな魚が語源だそうです。
<小さな“ハエ”が入りました> <集う“コサギ”も知りません>
救出作戦開始当日の11月14日は、午前中から水面の面積を狭める作業が展開されました。締め切る所の上流側では、事前に避難させておいた鯉やハエが、排水ポンプの水貯めの所で待機していました。
<施工箇所の上流の流れも小さくなりました>
<着々と埋め立てが進みます>
<上流側のポンプ水貯め> <3匹並ぶ鯉の背が見えます>
まずはその鯉3匹を、鴨川漁業協同組合の澤代表理事が網で捕獲して、最初の救出です。大きな鯉は捕まるまいと激しく抵抗しましたが、狭い水貯めの中では逃げ切る事は出来ません。網の中に収まって鴨川へと救出されました。その一部始終を写真でご紹介します。
<救出作戦開始> <鯉も抵抗>
<網に収まりました> <大きな鯉です>
<第一要救出“鯉”確保> <鴨川の流れへとダッシュ>
<放しますよ> <救出完了>
<二匹目も 同様に> <三匹目完了>
水貯めの中には、小さな魚がピンピンと跳ねています。網を入れると小さなハエが入ります。この小さなハエも作業員さんが時間を見つけて鴨川へと運んでくれました。
<小さな“ハエ”も地道に救出>
水が干上がりかけた場所では、ゴリが並んでいます。干上がって死んでしまったのかと思いきや、触ると“くねくね”動きます。京都土木事務所の職員がつまんで水に放してやると元気に泳いでいきます。
目に入った個体だけでも救出しようと、水に放してやりました。ゴリというのは泥があればなんとか命を繋ぐ事が出来るようです。
<泥の中に並ぶ“ゴリ”の死骸?>
<触ってみると 動いてる> <水に放してやりましょう>
<大きめの“ゴリ”です> <“ゴリ”救出>
下流の水抜きポンプの所に行くと、水が吸い込まれていきますが、透き通った水です。囲いの外の下流のすぐ傍の水がポンプに吸い寄せられて、護岸のぬけた所から逆流しているようです。
結果的に、埋め立て中の所の泥水を寄せ付けないので、泥の沈殿した上澄みだけが排水されていきます。急激に泥水が吸い出されない効果をもたらしたようです。
<外へ吸い出される水> <外から中へ吸い込まれる渦巻き>
松原橋の下に目をやると、木の杭が並んでいます。昔の松原橋の橋脚のなごりの様です。木の橋が架かっていた事がわかります。
<木の杭が水面から頭を出しています>
本格的な救出開始までは少し時間がかかりそうなので、一旦現場を後にしました。救出作戦のその後の展開は、賀茂川漁業協同組合の皆さんの記録写真でご紹介したいと思います。
澤組合長さんがその様子の写真を持って来所され、その様子をお話しされました。救出された生き物の名前を教えて頂きながら、楽しく救出作戦が展開された様子が伝わっていました。
最初にご紹介するのは、前半にもご紹介させて頂きました大物の“鯉”の救出です。大きな鯉を網で捕獲して流れへと運び出しました。
<捕まえやすい“鯉”から救出> <そっと放流>
大中小のスッポンが出て来ました。大サイズが1匹、中サイズが3匹、小サイズが1匹です。
<大・中サイズのスッポン>
<大サイズは甲羅の直径25センチくらい>
小サイズのスッポンは初めて見ました。まだ生まれて日が経っていない様で、お腹がまだオレンジ色の赤ちゃんのようです。
<小サイズのスッポン> <腹はオレンジに黒い斑点>
これで、スッポンも繁殖している事が確認出来ました。手のひらの上で、お腹を見ていると長い首を使って懸命にひっくり返ろうともがいていました。
<お腹見せるのは“ダメよ~、ダメダメ” 柔軟体操の様です>
続いてお目見えは、国の特別天然記念物に指定されている“オオサンショウウオ”です。鴨川の“オオサンショウウオ”は殆どの個体が中国種とのハイブリッド(交雑種)との調査結果が出ていますが、この個体もそうなのでしょうか。
<“オオサンショウウオ”> <少し小ぶりなサイズ>
少し前に四条大橋上流の園路で巨大な“オオサンショウオ”が歩いているのが発見されて、警察も出動する騒ぎとなりましたが、今回の個体は少し小さいサイズのです。手でそっと支えて抱き上げられた姿に思わず「かわいい」の声が出たそうです。
<澤組合長につかまる様な前足がなんとも言えません>
澤組合長いわく、“オオサンショウウオ”は水温が低い上流域にしか棲めないといわれているが、下流域のこの辺りは夏場の水量が少ない時期には、水温は30度近くに上昇する。
自然の生き物は環境に順応した個体が、子孫を残して個体を増やしていくので、昔の常識は覆されていく。自然界生き物の適応能力は人間の想像を超えた世界のようです。
鴨川で色んな生き物を見てきましたが、私にとっての初めて目にした生き物が画像に現れました。大きく成長した“モクズガニ”です。あの有名な“上海ガニ”の仲間でとても美味しい“カニ”だそうです。
<大きな“モクズガニ”>
澤組合長の遊び心の写真がこちらです。時にはカニのハサミの様な部品を装着して物を持ち上げる重機を、“モクズガニ”が挟んでいる様に見せた写真です。
<“エイ”挟んじゃえ>
次の遊び心は「似たもの同士」を並べて撮影です。“ギギ”と“ナマズ“形はとても似ていますが並べてみるとやっぱり違っています。
<“ギギ”上から> <“ギギ”横から>
<“ナマズ”上から> <“ナマズ”横から>
<上:“ギギ” 下:“ナマズ”>
また、”ギギ“と”ナマズ“同種でも色合いが違った個体がいます。金色がかった”ギギ“に対して真っ黒な個体。まだら模様の”ナマズ“に対して真っ黒な個体といった具合です。今回は真っ黒な”ギギ“は出現しませんでしたが、”ナマズ“を比較してみましょう。
<まだらの“ナマズ”> <黒い“ナマズ”>
<茶系の“ギギ”> <黒い“ギギ”>
“ドンコ“と”ヌマチチブ“も似たもの同士です。形は似ていますが、色合いと白い斑点の有無が見分けのポイントの様です。”ドンコ“は黒っぽく黒い”ブチ“があります。”ヌマチチブ“は茶色っぽくて白い小さな斑点があります。
<上:ドンコ 下:ヌマチチブ> <上:ヌマチチブ 下:ドンコ>
<整列して拡大 さあ、どっちがどっち>
外来魚の“ブルーギル”も小さいながら現れました。琵琶湖から疏水を泳いで鴨川へやって来たのでしょうか?
とはいうものの、“ブルーギル”は“ブラックバス”同様に絶滅の恐れのある在来生物の捕食、生態系への深刻な被害をもたらすものとして、「特定外来生物に指定されています。この魚は救助する事は出来ません。
賀茂川漁業協同組合でも外来種排除の取り組みもされています。皆さんも“ブラックバス”や“ブルーギル”を捕獲された場合は、その場から移動させる事無く速やかに殺処分して頂きますようお願いいたします。
<ブルーギル>
今回は巨大ウナギは現れませんでしたが、かわりに小さな“八目ウナギ”が救出されました。土用の丑に食べる蒲焼きの“ウナギ”とは全く別の種類の生き物で、あごが無いのが特徴です。口は吸盤の様に丸く開きます。
<八目ウナギ>
<見た目は“ウナギ”と間違えますね>
<確かに“あご”が無いようです>
鴨川では“鮒”は少ない様ですが、一匹だけ姿を見せてくれました。近くの老舗旅館の名前にちなんでではないのでしょうが・・・。
<ただ一匹救出された“フナ”>
小さい小魚は、ポンプの水吸い込まれて排水と共に鴨川の流れに戻る個体もありますが、吸い込まれた個体の生存率は2割程度だそうです。死んだり弱ったりした魚目当てに“ユリカモメ”が参集して待ち受けていました。
<排水口で捕獲> <生存確立約2割>
<待ち受けるのは“ユリカモメ”> <弱った小魚をついばむ>
今回は、賀茂川漁業協同組合の皆さんと、施工業者の皆さんが生き物を救出された様子をご紹介しました。普段は目にしない生き物も姿を見せてくれました。鴨川の生き物達に“ちょこっと”優しくする事が出来ました。
平成26年11月20日 (京都土木事務所Y)
京都府では、出前語らい専門員派遣事業を実施しています。各所属が関連する業務について、府民の皆様からの要請を受けて出張サービスで「出前講座」をお届けしています。事業の詳細は過去に「鴨川真発見記」でもご紹介しておりますので、そちらをご参照ください。
出前ウイークとなった11月の第2週、その第1弾が11月4日の午前中の授業です。4年連続してお声を掛けて頂いた「御所南小学校」の4年生の“総合的な学習の時間かがやき”です。鴨川について「わたしたちの鴨川」と題して鴨川をより良くしていくにはどうすれば良いかを35時間の授業を進める中で提案していこうという内容です。
その提案を考える前に、鴨川に関係する様々な分野の大人の話を聞いて参考にする時間にお呼び頂きました。
冊子「わたしたちの鴨川」をベースに説明させて頂きました。
<わたしたちの鴨川を画像で説明>
200人の児童を2班に分けて例年どおりスクリーンに映し出した画像で鴨川のあれこれを説明した後、質問タイムです。一斉に手が挙がりました。
「鴨川はいつ出来たのですか?」
「どうやって鴨川は出来たのですか?」
「鴨川に最初に来た生き物は何ですか?」
「鴨川にはなぜ生き物が沢山いるのですか?」
「平成に入ってからの鴨川の整備は何人でしたのですか?」
「鴨川の整備をしてどんな気持ちですか?」
「“かもがわ”はどうして“かもがわ”なのですか」
例年の事ですが、少々答えに窮する質問も飛び出しましたが、答えられる範囲でお答えしました。最後にクイズで鴨川の今の様子などを学習して頂きました。
そして、入れ替わりで2班目の児童を相手にダブルヘッダーの授業をさせて頂きました。初めて知った事も沢山あったようで、熱心にメモを取りながら集中力を切らさずにお話しを聞いてくれました。
<熱心にメモをしながら聴いて頂きました>
続いて第2弾が翌11月5日の午前中です。こちらは、今年度が初出前の「葵小学校」です。鴨川をテーマにした授業は、数多くこなしてきましたが、今回の依頼のテーマは“高野川”です。
高野川を取り扱った出前講座は初めてですので、「どうしようか」と思っていましたが、葵小学校の場合は既に児童が高野川をどうしたいかを話し合い、提案を発表してくれる所から始まりました。
<提案を発表して頂きました>
高野川へ行って、現状を見て考えた提案を聞かせて頂きました。やはり関心は「ゴミ」にあるようです。高野川の高水敷にはあまりゴミが無いけれど、川の中にゴミがけっこう落ちています。ゴミを捨てると水が濁って生き物が棲みにくくなると思う。そこで、ゴミを捨てないように注意するポスターを貼るという提案が多くの班から出されました。
<土木事務所の我々もメモを取りながら>
また、高野川にはゴミ箱を1つも設置していないので、ゴミ箱を設置すれば良いとの提案もありました。目線の違ったところでは、「魚を捕りすぎない」「ペットを捨てない」などの提案も頂きました。
これらの提案を聞かせて頂いた後に、感想とアドバイスの時間です。
管理室長からは、ゴミ箱とゴミの関係について、鴨川で取り組んでいる事例を紹介しながらお話しをさせて頂きました。
鴨川では、西賀茂橋から下流は御池大橋までの間ゴミ箱を少しずつ減らして来ました。
ゴミ箱には、鴨川を利用された方が食べ残したお弁当などの食べ残しも捨てられます。その食べ残しを「カラス」や「トビ」が、“がさごそ”と探してゴミを散らかします。そこでゴミ箱を減らして様子を見ています。
鴨川と高野川の合流点では、花見の季節には多くの人が花見をされます。今ではこの様な状況は見られませんが以前、ゴミ箱を設置していた時には、そのゴミ箱の周辺に大量のゴミが捨てられて「カラス」や「トビ」が沢山集まっていました。
<カラスの群れが荒らす 早朝> <カラスとトビ>
<ゴミ箱の容量をはるかに上回る> <ブルーシートにくるまれたゴミ>
そのゴミ箱を撤去したところ、以前の様な大量のゴミが放置される事が無くなり、大きなゴミ袋を提げて帰っていく若者の姿も見られる様になりました。
<ゴミ、ブルーシートを持ち帰る若者>
また、川の中にあるゴミは何処から来たのか考えてみる事をアドバイスしました。高野川の中にあるゴミは、高野川に向かって投げ入れられたゴミばかりでしょうか?
高野川の水は何処から来たでしょう。「琵琶湖」という反応もありました。
高野橋上流で一部流れ込んでいますが、量は多くありません。「何処から来るの?」とみんなの視線が集まりました。
上を指差して、「空から来ます。」と話すと「へー」という反応です。高野川のまわりの山や住宅地に降った雨が小さな流れとなって色んな所で合流して高野川は流れていきます。皆さんの身近にある小さな流れも全ては海に向かって流れています。
という事は、高野川に直接ゴミを投げ入れ無くても、小さな流れにゴミを捨てると、それが水の流れに乗って高野川に入って来る事を伝えました。高野川にポスターを貼るだけではなく、市街地を流れる小さな水路にもゴミを捨てない様にしなければ川の中のゴミは減らせない事を知って頂けたようです。
<高野川へ流れ込む流れに乗ってゴミが運ばれて来ました>
大人がつくるポスターよりも、小学生の児童による手作りのポスターの方が効果があると思います。一生賢明つくってくれたポスターを活用させて頂く機会があればと思います。ここで、児童が描いてくれたポスターの一部を紹介したいと思います。葵小学校から選抜されたポスターです。
<ごみのポイステ禁止>
<むやみに生き物を取らないでください>
<ゴミのポイすてやめましょう ダメ!×>
<守ろうわたし達の高野川>
どのポスターも、自分たちの身近な高野川を綺麗に保っていきたいという熱い気持ち伝わってくる作品で、大人にも充分にその心意気が感じられると思います。
2日空けて、出前ウイーク第3弾は11月8日土曜日に開催しました。
大人の防災学習のお手伝いです。下鴨学区の社会福祉協議会、自主防災会、賀茂文化研究会の皆さんと語り合う機会を頂きました。
「洪水から生命・財産を守る~鴨川の河川整備~」と題して鴨川の歴史、整備、最近の鴨川の増水などのお話しをさせて頂きました。
お呼びいただいた方から「何人集まるか不確定ですが」とお聞きしていましたが、開始時間が近づくと予想以上の住民の皆さんが会場にお集まりになりました。
<今回は防災学習>
平安京での鴨川の位置付けや、暴れ川として氾濫を繰り返した鴨川がどの様な経過を経て今の姿に変化してきたのかなどをお話しして、その後最近の豪雨による増水の様子や、増水した川には近づかない、鴨川も決して溢れないとは言えない事、溢れた場合は自分の身は自分で守る、などのお話しをさせて頂きました。
<平安京四神相応の図 京都土木事務所職員作成>
「話の途中でも“どんどん”質問してもらって結構です。今日は何かひとつ“へ~”そうだったのかを見つけて帰ってください。」とお話しの冒頭に申しあげましたところ、沢山の質問を頂き、出前講座は盛り上がりました。
<御参集頂いた皆さん> <鴨川の変遷>
自主防災会の会長からは、浸水ハザードマップを示しながら、鴨川が溢れた場合は、下鴨学区ではこのハザードマップのとおり50cm以下の浸水が起こります。2階があるお家の方は避難所に集まるのではなく、2階へ垂直避難してくださいとの補足がありました。
<浸水想定区域図>
「普段あまり聞かないお話しに“へ~”の連続でした」とのお言葉も頂いて、出前講座は好評を頂いたようです。
最後に、この下鴨学区に昔存在した農業用水路“蓼倉川”の流路がどこにあったのかを追跡して確定した事を報告しました。
<流路確定の手順を説明する飯塚氏>
すると一人の少年が、“蓼倉川”の流末付近に水門がある事を教えてくれました。「どこ?」と尋ねると、前に出て来て指し示してくれました。そこは泉川が分岐している所とわかりました。この少年が、講座の時間中良い具合に合いの手を入れたり、数々の質問を投げかけてくれて、おおいに盛り上げてくれました。
<物知りな少年>
※蓼倉川についての詳細は「鴨川真発見記第165号・166号を御覧ください。
昔の地元の様子を知り、伝える事の大切さを再確認して講座を終了しました。
ちなみに、この“蓼倉川”流路追跡のお話しが、京都新聞に掲載されましたので、ここでご紹介したいと思います。ドキュメンタリータッチの非常にわかりやすい記事に仕上げて頂きました。有難うございました。PDFでご紹介しますので是非お読みください。
この様に老若男女の世代を問わず「出前講座」を実施しています。「鴨川真発見記」をご覧の皆様も、鴨川のお話をお聞きになりたい方は、ジャンルを問わず出前させて頂きますので、是非この制度を御利用頂きたいと思います。「鴨川真発見記出前講座」も承りますのでお声掛けください。
平成26年11月13日 (京都土木事務所Y)
10月26日(日曜日)は、鴨川探検!再発見!第37弾が開催されました。残念ながら中止となった前回の分まで楽しもうと小学生18名、保護者14名の合計32名が集まってくれました。
<川に入る時の注意事項説明> <用意されたテーブルを囲む参加者>
<満席となりました> <指導員の皆さんの自己紹介>
京都土木事務所で事前説明と自然観察指導員さんの紹介の後、早速元気よく鴨川へと向かいます。その玄関先には、指導員さんが事前に捕獲しておいてくれたお魚がいました。みんな興味深くみますが、それは外来魚のブラックバスでした。「鴨川にもいるの!」と驚きを隠せない保護者の方の声も聞こえてきます。
<もう何か捕まえた?> <指導員さんが事前に捕まえた“ブラックバス>
<勢いよく鴨川へ> <バケツと網も用意>
鴨川に着くと、前半は川沿いの植物や昆虫を見てみようです。
エノキに赤い実がなっています。シジュウカラもちょこまかと実を食べに来ているようです。みんなも鳥の気持ちになってみようと、その赤い実を食べてみました。「甘い!鳥の気持ちになれました」との感想もいただきました。
<秋晴れの観察会場> <エノキの実 初めて食べました>
”落ち葉をめくってみよう”の指導員さんのところでは、たまった落ち葉を容器に入れて”ごそごそ”と探っておられます。すると、色んな小さな虫たちが姿を現します。動きの速い虫もいれば、のんびり動く虫も小さな空間に個性豊かに観察できます。
<ここにも“虫”が> <たまった落ち葉をかき分けて>
<用意した容器に広げて観察>
野鳥担当の指導員さんのスコープには、つい先日渡ってきた鴨の仲間“ヒドリガモ”や、サギの仲間の中でも最大級の“ダイサギ”が目の前に見えています。「うわ~、目の前に居る」の言葉が嬉しいですね。
<ダイサギ> <ヒドリガモ>
植物担当の指導員さんが取り出されたのは、目打ちと爪楊枝です。“まあるい”どんぐりの平たい部分の真ん中に目打ちで穴を開けて爪楊枝を差し込みます。すると“こま”の出来上がりです。用意された紙箱の中でくるくると回りました。
<穴を空けて爪楊枝をさすと> <ドングリ“クルクル”のコマ完成>
バッタを捕まえたよと、少年が見せてくれました。「口が赤いよ!」と教えてくれました。よく観察出来ました。
バッタの口が赤いなんて事は気にもしませんでしたが、捕まえるとソースの様な液体を口から吐くのを思い出しました。
<バッタ> <よく見ると赤い口元>
保護者の方の嬉しいお言葉を聞かせていただきました。「家の娘は虫なんて触ることが出来なかったのですが、この企画に参加してから虫を平気で触る事が出来る様になりました。」そう語るのは、前回(春の回)でテントウムシの羽化過程をお持ち帰りになった保護者の方です。無事成虫になったそうです。
<第35弾で発見したテントウムシ> <無事羽化したそうです>
「ぴゅー、ぴゅー」と川原に音色が響きます。細くて柔らかい草の葉で“草笛”です。唇に大きめの葉をあてがって吹く草笛とは少々趣が違います。
両手の親指の間に細長い葉を固定するのですが、指の関節と間接の間は密着させずに、隙間を空けておくことで葉が振動するスペースを確保して音を出すのです。
<草笛がピュー> <保護者の方も挑戦>
<コツをつかんで“ピュー”> <子供達も次々と>
子供たちだけでなく、大人も夢中で鳴らしていました。こつをつかめば誰でもできそうです。みんなもお友達に教えてあげたくなりますね。
<両手の親指の隙間を利用して草を震動させます>
続いて登場は、ヤマブキの茎鉄砲です。ヤマブキの茎を切って、中の芯を爪楊のとがっていない方で“ぎゅー”と押すと、圧縮されたスポンジ状の芯が“ポン”と飛び出るというお遊びです。お見事芯が飛び出ました。
<芯を爪楊枝で押し出すと> <“ぽん”と飛び出しました>
そろそろ川に入る時間がやってまいりました。秋の川の中、冷たいかと思いましたが、晴天に恵まれた鴨川は心地よい冷たさです。
子供たちは網を片手に思い思いに川に入ります。中には“おっかなびっくり”の参加者もおられますが、馴れてくると大丈夫です。シリモチをついて完全にずぶぬれの参加者も何人か見受けますが、一様に笑顔です。
<いざ鴨川へ 浅い所から入ります> <さあ捕るぞ>
「エビ採れた!」「小さい魚採れた!」「カニ採れた」とバケツの中に次々と運ばれてきます。エビは外来種の“沼エビ”だそうです。
植物担当の指導員さんが、また面白い遊びを教えてくれました。子供たちよりも保護者の方が楽しんでおられた感がありますが・・・。三角形の茎の軸を持つ植物が用意されました。二人で両端から二つに裂いて裂け目を広げていくと、最終的に四角に広がれば“相性良し”のお遊びです。四角く広がらない場合はM字型になるそうです。
<三角形の茎を裂いて> <四角く広がると“相性良し”>
この植物はこうして四角く広がる事から、”蚊帳(かや)つり草“と名が付けられているのだそうですが、今の子供たちには”蚊帳“が何なのかさっぱりわかりませんねとコメントされていました。
<河原に沢山生えている“蚊帳つり草”>
子供の頃は鴨川で夢中になって魚を追いかけていたとおっしゃる保護者の方、川に入る時には「子供の頃とは違って身体が重い」とおっしゃっていましたが、しばらくすると、川のなかで“ダッシュ”しておられました。まだまだ若いです!!!
<川の中を“ざぶざぶ”と> <エビが捕れたとテンションアップ>
今回の企画の情報をお知りになった賀茂川漁業協同組合の澤組合長が会場に駆けつけてくださいました。駆けつけていただいただけでなく、投網を披露してもらえるとあって、ますますテンションがあがります。
<飛び入り参加の澤組合長> <鮮やかに投網が放たれます>
何度かの投網で、小魚が入りました。浮かべられた衣装ケースの中には、“オイカワ”“ズナガニゴイ”が泳いでいます。
澤組合長の目線が“ナマズ”を捕らえました。その大きなナマズめがけて投網を放ちます。ナマズは驚いて逃げます。網には入らず、食べかけていた魚を口からこぼして逃げました。こぼされたもののその魚は生きてはいられない状態でした。その瀕死の魚を少女が拾いあげました。
<写真中央に「ヌラリ」と”ナマズ”> <ひん死の小魚 これも”ズナガニゴイ”でした>
その大きなナマズは、護岸の下に頭を隠して逃げ込んだのを澤組合長は見逃さなかったのです。子供たち呼び寄せて囲うことで捕獲しようとしましたが、少々はやる気持ちもあって逃げられました。
<ナマズめがけて> <網を打つ>
<護岸の石の間にナマズが逃げ込んだ> <みんなで囲って 逃げられた>
ここで、澤組合長の漁業魂に火がつきました。狙ってしとめる“なまず”投網です。ナマズの姿を確認しながら、そのうえに被せるように網を打ちナマズゲットです。鴨川探検史上最大の獲物となりました。
<漁業魂に火が着いた澤組合長> <よし捕まえた>
<大きな“ナマズ”ゲットです>
<澤組合長 ひと仕事終えて笑みがこぼれました>
川の中生き物担当の指導員さんが、子供達との共同作業で生き物を追い込む方法を指導してくださいました。上流と下流そして横から三方から追い込んで一箇所に集まります。そうすると網の中に何か生き物が入っています。
<何人か集まって> <足で川底を“ゴソゴソ”しながら>
<範囲をせばめていきます> <何が入るかな>
<こんなの入りました> <“コオニヤンマ”のヤゴです>
植物担当の指導員さんから、「この草の葉を噛んでみて」と野草を差し出されました。一枚ちぎって噛んでみると、最初は何の味もしなかったのですが、しばらく噛んでいると“ピリピリ”とキツイ辛みが舌先を刺激しました。
保護者の方や、スタッフも口にしてみましたが、やはり強烈な辛みにビックリです。「ヤナギタデ」という蓼科の植物です。
「もっといい味がするのかと思ったら」と指導員さんに話すと、自然観察指導員成り立ての私に返って来た言葉が、「そんな単純なもの食べさせませんよ“自然観察指導員”は」と厳しいお言葉でした。自然観察指導員の道も厳しいと、後引く辛さをかみしめました。
「蓼食う虫も好き好き」という言葉の味をかみしめる事で、また一つ学習させていただきました。
<好んで食べる虫もいる タデ>
その足元にピンク色の花を咲かせている植物が生えています。それは、「ミゾソバ」と教えて頂きました。日本野鳥の会京都支部の方から、先に紹介しました「ヒドリガモ」が好んで食べる草と聞いていましたが、実物を確認していなかったので、また発見です。
<「ヒドリガモ」の好物「ミゾソバ」>
昆虫担当の指導員さんが手にして説明されているのは、「エンマコオロギ」です。
「オスかメスか分かるかな」と言いながら、解説して頂きました。写真の「エンマコオロギ」はオスです。メスにはお尻の真ん中から長い管が突き出ていて、土の中に卵を産み付けるそうです。
<エンマコオロギのオス>
楽しい時間が過ぎるのは早いもので、「まとめの時間」が来ました。参加者一堂木陰の階段に集合して、今日のまとめです。
最初に、魚や水生生物の担当の指導員さんから、今日捕まえた生き物の説明がありました。
なんと言っても、今日の主役は大きな“ナマズ”です。見事捕獲した澤組合長に大きな拍手が送られました。澤組合長も帽子をとってそれに応えられました。
<今日の主役は“ナマズ”> <拍手に応える澤組合長>
<この日捕まえた生き物>
捕まえた生き物の生態や特徴を丁寧に説明されました。参加者の小学生は、自分が捕まえた生き物が紹介されると、「私が捕まえた」と声が上がりました。
少し紹介しますと、
「ミズカマキリ」はお尻長い管から息をしながら獲物を探す
<ミズカマキリ>
「コオニヤンマのヤゴ」はあまり動き回らないけれど、お尻から水を吸い込んで、勢いよくお尻から噴射して“ぴゅっ ぴゅっ”と前進する
<“コオニヤンマ”のヤゴ>
「ヘビトンボ」は水質の綺麗な場所に生息する水生昆虫です
<綺麗な水を好む「ヘビトンボ」>
“オイカワ”という魚は小さい時は、ほとんど銀色ですが、もう少し大きくなって繁殖期に入ると、これがあのオイカワなのと思う位にカラフルな色に変化します
<今の時期 オイカワの腹は銀色>
野鳥担当の指導員さんからは、今日見た野鳥の紹介がありました。「シジュウカラ」を写真に写す事が出来た参加者の紹介や、目で見るだけでなく、鳴き声を聞く事でその野鳥の存在を感じる。五感を駆使して自然観察をする事も教わりました。
<この野鳥見た人>
参加頂いた小学生の皆さんのみならず、保護者の皆さんも童心に帰って楽しいひとときを過ごして頂く事ができました。自然観察指導員京都連絡会の皆様、そして飛び入り参加で大活躍頂きました澤組合長、有難うございました。
“まとめ”終了後も、捕まえた生き物達との“ふれあい”が続きましたが、時間が長くなると生き物達が弱ってしまうので、なごりを惜しみながら川に帰してあげました。
平成26年10月28日 (京都土木事務所Y)
<生き物を眺める参加者>
大きな“ナマズ”は、ケースの中で弱った小魚を口にあてがうと、その鋭い歯で捉え、胃袋の中に運んでいました。食物連鎖を目の当たりにする事となりました。
<ガッチリくわえました>
<次第に口の中へ> <少し大きな小魚も>
鴨川で鮎や鯉を釣っておられる様子はよく見かけますが、今回ご紹介するのはハエの釣果を競う「ハエ釣り王座決定戦」です。JFT全日本釣り技術振興評議会が主催して開催されました。
<全日本ハエ釣り王座決定戦>
私事ですが、「自然観察指導員」の一員に名を連ねることとなった私の興味をそそりました。
あまり自然に関心の無い方に目を向けてもらう活動も「自然観察指導員」の役割です。この釣り大会をご紹介する事で、その役割の一部を担いたいと思います。
10月11日(土曜日)の午前中は少年・少女の釣り教室が開催されていました。お昼前に会場到着となりましたので、少年・少女が釣りをしている場面には出会えませんでしたが、その釣果を見せて頂く事ができました。
<荒神橋・丸太町橋間が会場> <親子連れの姿が>
カタカナで“ハエ”という字を見ると、「ぶんぶん」と飛び回る虫の“蠅”を連想する方もおられるかと思いますが、小魚の“ハエ”です。正式には“オイカワ”という名前の魚です。
少年・少女が釣り上げた“ハエ”を見せていただきました。釣り教室の指導員さんは、翌日から始まる「王座決定戦」の選手の皆さんや、賀茂川漁業協同組合や大会役員の方々です。
<飛び出さない様に蓋をして> <本日の釣果>
丁寧な指導で釣り上げた“ハエ”は、クーラーボックスに入れてお持ち帰りです。「どんな料理で美味しく頂けますか」と尋ねると「甘露煮か唐揚げ、今の時期は唐揚げがお勧め」と指導員さんに教わりました。
一人の少女が大きめのアユを大切そうに手に持っていました。「自分で釣ったの」と尋ねると、賀茂川漁業協同組合の澤理事長が手づかみで捕まえてくれたそう。「美味しく頂きます」とのコメントを頂きました。
<賀茂川漁業協同組合の澤理事長“手づかみ”のアユ>
釣り教室で釣りをする傍ら、川の中で目にした“ゴミ”を拾う事も忘れません。自然保護の第一歩清掃活動も同時進行で行われました。その日はその辺で会場を後にしました。
<ゴミもこんなに拾いました>
台風の上陸を控えた10月12日(日曜日)は、天候を心配しつつ会場を訪れてみました。高野川沿いを進んでいくと、蓼倉橋付近で釣りをする親子を発見です。
<西山和治郎くん親子>
鴨川真発見記でもお馴染みとなった“西山和治郎くん”親子が釣りを楽しんでおられました。会場到着が遅くなった前日の釣り大会に、西山くんも参加されていたそうで、早速その成果を試しておられたようです。
会場に着くと、鴨川の中に釣り人発見です。遠くから眺めていると、竿を降り出してエサが水面に落ちてから「1、2、3・・・・7」秒くらいで竿が立てられ、手元には“ハエ”が次々とキャッチされていきます。
<エサを付けて> <竿を出し>
<あっという間にゲット> <すぐに次の一投>
さすがは全国のトーナメントを勝ち抜いた精鋭8人の釣り師の皆さんです。
会場を離れて、お昼休みの時間に再び集合場所を覗くと、おびただしい数のハエ(オイカワ)がオケに移されて、その釣果が確認されていました。
<一匹、一匹丁寧に確認> <生きたままに>
「何をエサに釣っておられるのですか?」と尋ねると、“練りエサ”と返事が返ってきました。午後からの対戦に向けて、新たにエサを仕込んでおられました。
あの“ハヤワザ”のエサ付けには、専用のマシンが欠かせないようです。そのマシンに仕込んだ練りエサを、注射器の原理で少しだけ出して針に付けるそうです。
<練りエサを仕込んで> <ワンプッシュで必要分が出ます>
<それを小さな釣り針に引っかけて>
ただでさえ口の小さな“ハエ”釣りです。毛針かなと思っておりました。昨年のNHKBSプレミアムの番組「新日本風土記 京都鴨川」で料理店の女将さんが鴨川で自分が釣った魚を提供されている事を知りました。その女将さんは自然の虫を捕まえてエサにされていたのを思い出しました。
この練り餌が大量釣果に繋がっていたのですね。知らない世界を覗いて新発見です。驚きです。
澤理事長にスコアカードを見せていただきますと、午前中で三桁の数字も並びます。
<最多の数字は295匹>
そうこうしているうちに、午後の部が始まりました。ここで少しルールを教えて頂きました。鴨川の南は五条大橋から北は賀茂大橋までの間で、橋と橋の間に2人の選手が川に入ります。橋間の真ん中で上流、下流の漁場を分けます。各自決められた場所で一定時間釣ります。そして、時間が来ると上下流を入れ替えて、同じ時間釣り糸を垂れて、釣果を競います。
<二人の選手が競います> <上下流の場所を決めます>
<さあ、午後の競技開始です> <ご自分の持ち場へ>
<座り込む選手あり> <たたずむ選手あり>
午後の部が始まると、西山和治郎ファミリーも競技の観戦に会場へ足を運ばれました。「あの方のハヤワザを観に来ました」と。
翌日は非常に強い台風が上陸するとの状況で、大会の継続が危ぶまれる状況でしたが、後日主催者の方から大会結果の概要をお送り頂きましたので、ご紹介します。
大会は12日の1日、8名、90分、1人5試合。総釣果は、5,311匹だったそうです。1試合一人平均132.8匹もの“ハエ”が釣り上げられたそうです。「そんなに釣れるの」というのが正直な感想です。
釣り上げた“ハエ”は、上流にリリースして再び繁殖するようにされるそうです。
時間と場所による釣果や、大会の総評価、選手の話など大会結果の詳細は、公益財団法人日本釣振興会京都府支部副支部長の多賀紀文氏が、まとめられた資料をご覧ください。
印象に残ったのが選手の話です。「撒き餌をするとハエが多く集まり人影を見ても逃げない、観光客馴れしているのか」のくだりです。逆に釣られる事が少ないので、警戒心が無いのかも?とも思いますが・・・。
平成26年10月15日 (京都土木事務所Y)
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