ふるさとトピックス!福知山、舞鶴、綾部
更新日:2024年6月26日
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工業高校で金属加工など「ものづくり」を学んで製薬会社に就職し、職場の機械・装置にとどまらず医薬品の様々な知識を身につけて活躍する若者がいる。日東薬品工業株式会社長田野工場を訪ねて話を聞いた。生命に直接関わる「薬」を作る職場ならではの責任と誇り。着実にステップアップを重ね、周囲からの期待も大きい小田敏之さんの仕事とはー。
小田敏之さん
京都府立工業高等学校の機械プランニング科(当時)を卒業して日東薬品工業株式会社に就職。綾部工場で勤務していた二十歳の頃、職場近くにアパートを借りて一人暮らしを始めた。現在は長田野工場製剤課で、工程責任者代行として活躍中。
長田野工場で主に生産しているのは「若甦(じゃっこう)内服液G」。薬効分類はビタミン含有保健薬で、分かりやすく言えば栄養ドリンク。高麗人参などを配合した【滋養強壮】、虚弱体質・肉体疲労・発熱性消耗性疾患・病中病後・胃腸障害・栄養障害・産前産後などの場合の【栄養補給】が、効果・効能として認められている。「仕事が忙しい時には私も飲んでいます」と小田さん。「ただし、効果を実感するより先に、作った製品の品質が気になってしまいますが」と笑う。
若甦の生産に携わるようになった後、大阪市内へ出かけた際に、あちらこちらの薬局でイチオシ商品として大々的に売られているのを見た。目立つ場所に置いてもらい、店員さんの手書きひとことメッセージPOPがついていた。「こんなに勧めてもらえているんだ」と嬉しくなり、心の中でガッツポーズをした。
高校では精密旋盤やアーク溶接、プログラムなどを学び、製図を得意にしていたので、「自分は金属加工の会社に就職するだろう」と思っていたが、3年生になって求人票や資料を見るようになり、「自然に囲まれたきれいな職場だし、(固形剤を作っている綾部工場では)自分も知っている薬を手がけていたので」と、日東薬品工業を志望した。
仕事は緊張を強いられるが、気兼ねのない職場なので、ひと息ついた時には雑談をしたり、サッカー・ワールドカップの期間中にはその話題で盛り上がったりもした。入社時から先輩たちは気さくで、仕事の内容も一つひとつ教えてもらいながら学んでいった。
ところが、ある日、操作を間違え製造をやり直すことになったケースがあった。「単に機械の操作を覚えるだけじゃだめだ。いま何をしていて、何のためにそれをしているのか考えながらしないと」と、その失敗から学んだ。
製剤課の先輩、上原拓也さんは「ミスはしない方がいいけれど、どうしても出てしまう。大事なのは、その後です。彼は失敗から良い気づきを得ました」と話す。
上原さん(右)と小田さん
製薬業界では世界的に、医薬品の製造管理及び品質管理の基準・GMP(Good Manufacturing Practice)という基準が定められている。⑴人為的な誤りを最小限にすること、⑵医薬品の汚染及び品質低下を防止すること、⑶高い品質を保証するシステムを設計することが三原則。人為的ミスを最小限にすることが前提だが、ミスをゼロにすることはできない。ならば、ミスが出たときに個人を責めるのではなく、原因を突き止めて再発を防ぐことに、会社を挙げて取り組んできた。
どんなシステムを入れても、どんなハード・ソフトを整えても、使う人が手順を守らなかったり、うっかりしていたりすると、ミスは出る。「最後は結局、人なんです」と上原さん。昨今の製薬業界では、行政が許可した承認事項と異なる方法で医薬品を製造したとして業務停止命令を受ける企業があるなど、業界全体に厳しい目が向けられている。「その厳しい目を、イヤだなと避けるのではなく、真正面から受け止め、信頼に応えていけるようにと、みんなで奮い立っているところです」と上原さん。小田さんも「よそごとと思わず、『これぐらい、いいんじゃないかな』をなくそうと、常に自分たちの作業を見直しています」と言う。
職場で2022年10月に工程責任者の代行になった。勤続年数を重ねれば誰でもなれるというものではなく、上長の推薦と、会社の承認があってのこと。これまでと違って、作業員から報告を受ける立場になった。トラブル発生時の処置が正しかったかどうか、なぜそう処置する判断をしたか、過程を問われる立場でもある。「これまでそうだったから」は通じない。学ぶことが増え、職場のGMP勉強会に加え、責任者向けの勉強会にも出るようになった。
「勉強会の資料を作るのも勉強の一つ」という先輩の教えもあり、四苦八苦しながら資料を作って勉強会に臨む。確かに、資料を作る過程で、勉強会のテーマについて自分なりに深く理解できていくことを実感する。図解を入れてみるなど工夫を凝らした資料は、周囲からの評価も高く、高校で得意にしていた製図の視点や技術が役立っていると感じる。
勉強会など改まった場だけでなく、日常の業務の中からも学ぶことは多い。自分たちが作った医薬品で、健康を損なうような事態は起こせない。プレッシャーは大きいが、それをエネルギーに変えてくれる職場でもある。「気概を持って仕事に励みたいです」
長田野工場は実家からはすぐだが、いま住んでいるアパートからは車で20分ほど。「遠いとか、不便だとかは思いませんね」。仕事とオフを切り替えるのにちょうどいいぐらいの時間だという。車の中では好きな音楽をかけ、自分も一緒に口ずさみながら走り、「20分だとちょっと短く、この曲を最後まで聴きたいからーと、わざと遠回りすることもあるぐらいです」とも。
アパートでは2022年7月から熱帯魚を飼いだした。アロワナやポリプテルスが、ゆったり泳ぐ姿を見ていると、癒されるし、頭を真っ白にしてリフレッシュできる。「魚相手だけど、気持ちが通じる気がするというか。エサの袋をがさがさしだすと、チラチラとこちらを気にし始めるのがかわいいです」。元気をもらって、張り切って出勤する毎日だ。
日東薬品工業株式会社長田野工場
福知山市長田野町2丁目62の2(長田野工業団地内)
電話0773-27-5344
【福知山】日東薬品工業株式会社・小田敏之さん「生命に直接関わる『薬』を作る職場ならではの責任と誇り」/京都府ホームページ (pref.kyoto.jp)
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