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更新日:2021年3月2日

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【Iターン】田舎暮らしの酸いも甘いも楽しんで(まりげさん/舞鶴市)

地元の埼玉県から舞鶴市へIターンで移住したまりげさん。田舎暮らしや3人の息子さんたちとの日々を漫画で発信する人気コミックエッセイストです。慣れない土地での田舎暮らし。最初は戸惑うことばかりでしたが、「いろんな困難や失敗を楽しみながら乗り越えてきた」と振り返ります。移住するまでの経緯や今の暮らしについてお聞きしました。

筆と鍬を持ち替える、便利な田舎の兼業暮らし

京都府北部に位置する舞鶴市。リアス式海岸の穏やかな海に面した場所に、まりげさんと夫の岡山拓也さん、そして、7歳・5歳・2歳の3兄弟が暮らしています。


リアス式海岸の舞鶴湾は穏やかな海が特徴。(写真提供:まりげさん)


遠くに見えるのは牡蠣の養殖イカダ。取材当日は大寒波が日本列島を覆っており、舞鶴湾が雪化粧に染まっていました。

普段、まりげさんは「コミックエッセイスト」と「兼業農家」の2つの肩書きで仕事をしています。やんちゃ盛りの子どもたちとの日常をユーモアたっぷりに描いた漫画が話題となり、Instagram(@marige333)のフォロワーは約20万人。首都圏の企業から商品やキャンペーンに関するPRも請け負っており、Instagramを活用することで、地方にいながら都会の仕事にも携わっています。


漫画を描くようになったのは移住がきっかけ。埼玉県から舞鶴市に移住し、気軽に会えなくなる友人に向けた近況報告のつもりで描き始めたのだそう。著書『たのしいことを拾って生きる。』も出版しています。

また、移住後に農業を始めて、住まいの裏手にある畑ではいろんな作物を育てています。まりげさんの農業の師匠は、夫・拓也さんのおばあちゃん。昔ながらの農作業を教わりながら、野菜やお米などを育てています。

人気商売の作家業と地道に作物を育てる農業。「あえて性質の違うものを掛け合わせることでお互いを補っている」とまりげさん。漫画に行き詰ったときはペンを鍬に持ち替えて、広い空を仰ぎながら農作業に勤しんでいます。


まりげさんが育てた野菜たち。佐波賀地区は非常に美味しい野菜が育つ土地柄なのだそう。京の伝統野菜『佐波賀だいこん』が有名です。(写真提供:まりげさん)

一方、「根っからの田舎好きではないんです」とまりげさん。1カ月に1回くらいは都会に遊びに行きたくなるそう。『便利な田舎暮らし』を目指す舞鶴市では、そんなライフスタイルも気軽に実現できます。

「好きな音楽を流して、綺麗な景色を見ながら2時間ほどドライブを楽しめば、京都市内はもちろん、大阪や神戸にも行けちゃいます。長閑で自然豊かな田舎だけでなく、都会の刺激やエッセンスも暮らしに取り入れたい。そんな田舎と都会のいいとこどりができています」


拓也さんも普段は牡蠣の養殖業をしながら、閑散期には中古物件のリノベーションを兼業。YouTubeチャンネル『オカハチリノベーション』では、旦那さんがリノベーションで得た知識を発信しています。(写真提供:まりげさん)


拓也さんの家業を活かした『岡山八朗兵衛商店』では、原材料になる魚介類の養殖、漁獲から、加工、パッケージデザインに至るまで一貫して自社で行っています。オンラインショップでは、牡蠣や真蛸の燻製オリーブオイル漬けも販売。(写真提供:まりげさん)

自分の好きなことを仕事にしながら、自然豊かな田舎暮らしを送っているまりげさん。でも、現在の日常を手に入れるのは簡単ではありませんでした。

移住後に変わった環境、暮らし、家族の絆

舞鶴市に帰郷して、祖父が営む牡蠣の養殖業を継ぎたい。拓也さんから移住の相談を受けたのは、次男が生まれたばかりのころ。地元・埼玉県を離れ、慣れない土地での田舎生活。まりげさんは不安でいっぱいでしたが、家族と一緒に過ごす時間を大切にしたいと移住を決心します。でも、当初は環境の変化に戸惑いばかりでした。

「移住したのは特に雪が多いタイミングでした。夫が使っていた小型船に雪が積もって沈んでしまうほどだったんです。私の生まれ育った埼玉県は晴れの日が多い地域で、雨と曇りの日が多い舞鶴市とは真逆。地元の人からも『これが日本海の気候やで』と言われて、最初は慣れない環境に戸惑いました」


降り積もった雪を掻き出す拓也さん。(写真提供:まりげさん)

義実家での同居から始まった移住生活。まずは自分たち家族が住むための家探しに注力します。そこで紹介してもらったのが築100年の古民家でした。仕事の合間を使いながら住まいの改装をスタート。荒れ果てた状態に「半ベソをかきながら作業を進めました(笑)」と苦笑い。前職でデザイン関係の仕事をしていた拓也さんのスキルを活かし、自分たちでセルフリノベーションしながら、現在の素敵な住環境をつくっていきました。


寒さに凍えるまりげさんをみて、拓也さんが自作してくれた薪ストーブ。暖房機が必要ないくらい、家全体が暖かくなるそう。燃料となる薪は中古物件のリノベーション業でいらなくなった建材を使っています。


居住スペースは仕切りをなくして1つの空間に。子どもたちが走り回れ、どこにいても家族の気配を感じられます。住めるような状態になるまで3ヶ月かかりました。

また、変化したのは環境や住まいだけではありません。
移住後の暮らしは、家族と夫婦の絆を深めるきっかけにもなりました。

「たまに夫の船に乗せてもらうことがあるのですが、仕事をしている姿がやっぱりかっこいいんですよね。腕に巻きついたタコを制圧したり、牡蠣が括られた30kgもある重たい紐を人力で引き上げたり。子どもたちも『お父さん強い!かっこいい!』って大興奮しています」


腕に巻きついたタコを制圧!仕事の場面だけでなく、自宅の内装や家具などをDIYする姿も”かっこいいお父さん”。(写真提供:まりげさん)

移住前の拓也さんは仕事の関係で朝から晩まで忙しく、家族とすれ違いの日々を過ごしていていました。でも、今では子どもたちが拓也さんの仕事を間近で見ることができ、「なんでもできちゃうお父さん」を誇らしく思っているのだとか。

とはいえ、危険と隣り合わせとなる海の仕事。まりげさんも拓也さんの無事を毎日祈るようになりました。何事もなく家族と過ごせる時間。その尊さを実感することで、夫婦間での信頼も深まったそうです。

自分たちでつくり続ける理想の暮らし

舞鶴市に移住し、現在の住まいに暮らし始めてから約2年。今後、まりげさんはどのような未来を描いているのでしょうか。

「移住してから地域のいろんな方々にお世話になってきたので、今度は私が舞鶴に恩返しする番。今年は子育て分野のNPO法人としての活動を始めますし、高校を訪問して学生たちにお話する機会もいただいています。将来の夢はフェスティバルを開催すること。舞鶴市に住む人たちが地元をおもしろい!って思えるようなことを企画していきたいですね」

最後にこれまでを振り返り、改めて感じていることを教えてくれました。最初から満足のいく暮らしがあったわけではない。でも、まりげさんにとって、移住後の暮らしは"生きている"と実感できる濃密な日々でした。

「今の家に住み始めたころ、大雨の影響で納屋にある古い井戸から水が溢れて浸水しちゃったことがあって。普通だったら愕然とする事態ですけど、そんなときでも夫とバケツリレーしながら二人で笑っていたんですよね。家の中が川になってるじゃん!って。これまでいろんな失敗や困難がありましたが、家族のおかげで楽しみながら乗り越えてこられました」

「1年目は寒さに震えて、2年目は断熱材を入れて、3年目には夫が薪ストーブを作ってくれて。自分たちの手で少しずつ理想の暮らしをつくり続けています。ここでの日々の出来事は“生きている”と実感できるものばかり。これから起こることにも笑って向き合えるだろうし、漫画のネタとして描いていくんだと思います。だからこそ、子どもたちに自信を持って伝えたいんです。大人になってどんな場所にいたとしても、あなたたちなら逞しく生きていけるよって」

 

ライター:山本英貴

 

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