ふるさとトピックス!福知山、舞鶴、綾部
更新日:2025年11月13日
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アパレル業界に飛び込んだ際、その厳しい現実を目の当たりにしました。大量生産・大量消費の時代において、縫製工場は価格決定権を持たず、受注先の決めた価格に従うしかない構造があり、まずはそこの改革からスタートしました。さらに、生産管理は極めて複雑で、一日に何百枚もの服を縫製するための工程管理や、短納期への対応などの改善に取り組む日々です。

国内で服を作ることの意味、その付加価値をどう表現していくかを明確にすることが今後の課題です。1着の価値をどう上げていくか。そのためには自社でどのようにデザインや企画をして売っていくのかということがより高く求められるのではないかと思うようになりました。
千葉県船橋市出身で、かつては大手の天気予報会社に勤務していました。そこでは、天候のデータ解析や予測業務に携わり、命に関わる情報を扱う重要な仕事に従事していました。しかし、デジタル社会の中で自身の役割が抽象化され、仕事に対する実感が薄れる感覚を抱えていました。
そんな中、新型コロナウイルスの流行と子どもの誕生を契機に、都会での暮らしに疑問を持つようになりました。都市部では、子どもたちが学校閉鎖の影響で自由に遊ぶことすらできなくなり、自身の子どもをコンクリートジャングルで育てることに違和感を感じたのです。
妻が舞鶴出身だったこともあり、「もっとローカルな暮らしも良いのではないか」と考えるようになりました。移住先としては、群馬や長野、大学時代を過ごした滋賀なども候補に挙がりましたが、最終的には妻の実家がある舞鶴に決定しました。ここならば、保育園問題にも悩まされず、妻の家業である福井センイの事業を継ぐことで、自らの仕事に責任を持つことができると考えたのです。

廃棄される衣服をリメイクし、新たな価値を付加する「サステナブルファッション」に注目しました。その一環として、プロバスケットボールチーム「長崎ヴェルカ」の旧ユニフォームをリメイクし、ファングッズとして再販するプロジェクトを展開しました。これにより、単なるスポーツユニフォームを超え、ファッションアイテムとしての可能性を広げることに成功し、こうした取り組みは、縫製工場が単なる受注生産ではなく、自ら価値を生み出す「ファクトリーブランド」としての立場を確立するための重要なステップとなっています。

縫製業界の厳しさを痛感する中で、新たな収益モデルを模索するようになりました。その結果、宿泊業への進出という大胆な挑戦を決意しました。宿泊施設を開業することで、工場の見学者や取引先が滞在できる場を提供し、縫製業の魅力をより多くの人に伝えることができます。
また、訪問者に対して「縫製技術を体験できる宿泊施設」という新しい価値を提供し、ビジネスの幅を広げる狙いもありました。宿泊施設のデザインには、「ローカルラグジュアリー」という新しい概念を取り入れ、単なる高級ホテルではなく、その土地の文化や職人技を体験できる空間を目指しました。建築設計には、京都市内のデザイナーや若手クリエイターたちが参加し、地元の伝統と現代的なデザインを融合させたユニークな空間を生み出しました。
さらに、ホテルのカーテンなども自社で制作し、縫製技術の魅力を宿泊客に直接伝える仕組みを作り上げました。このように、単なる宿泊施設ではなく、縫製業と観光業を組み合わせた新しいビジネスモデルを構築することができました。



縫製技術が単なるアパレル生産にとどまらず、より広範な分野で活用できる可能性を見出しました。そこで、新たなプロジェクト「ソーファブリック」を立ち上げ、縫製技術を建築やインテリアデザインに応用する試みを始めました。
例えば、ホテルやオフィスの空間設計において、布を使った間仕切りや装飾を施すことで、コストを抑えつつ独自のデザインを実現できると考えています。実際に、京都市内のコワーキングスペースの設計にも関わり、カーテンやファブリック製品の提供を行っています。このような取り組みを通じて、縫製業の新しい価値を創造し、業界の未来を切り開こうとしています。
また、地域の社会課題にも目を向け、空き家問題や人口減少といった課題に対しても積極的に取り組んでいます。特に、舞鶴では高齢化が進み、伝統文化の継承が難しくなっている状況にあり、このままでは地域の魅力が失われてしまう恐れがあります。そのため、地域に新たな産業を生み出し、若者が戻ってくる仕組みを作ることが重要だと考えています。
今後の展開としては、「衣食住」のバランスを取りながら、さらに地域に根ざした事業を展開していく予定です。特に、「食」に関する新規事業を計画しており、地元の食材を活かしたカフェの運営などを視野に入れています。観光地には魅力的なカフェが欠かせないことから、舞鶴の地域活性化の一環として、飲食業を通じた交流の場を提供したいと考えています。
しかし、飲食業は人材確保や初期投資の負担が大きく、慎重な資金計画が必要です。そのため、現在の宿泊業や縫製業の収益を基盤にしながら、無理のない形で事業を展開していく方針です。また、経営の安定化を図るために、企業とのコラボレーションや、新たな市場開拓にも積極的に取り組んでいきます。
福井センイ有限会社
〒624-0913 京都府舞鶴市上安久640-6
電話:0773-75-1075
ホームページ:https://sewing-fukui.com/(外部リンク)
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